国産梨花粉 27年全国販売へ 中国産輸入停止受け 千葉・JAいちかわ
火傷病発生に伴う中国産花粉の輸入停止問題を受け、千葉県のJAいちかわは、全国の生産者に向けた国産の梨花粉の販売に乗り出す。今春から管内に花粉採取の専用園を整備し、2027年3月から販売を始める。輸入に頼らず、国内だけで花粉を賄える体制を整える。 千葉県は梨生産量が日本一で、中でもJA管内は県内有数の産地となっている。JAでは管内の生産者の花粉を確保するため、1960年代から「花粉銀行」を立ち上げている。JA市川経済センターに開葯(かいやく)機や精選機などの機械をそろえ、組合員が持ち込んだ葯や花から花粉を採取し、翌日に引き渡す。 中国産花粉の輸入停止によって、国内の花粉不足への懸念が根強い中、JAでは昨年末、機械を更新したり人員を増やしたりして花粉銀行の体制を強化した。一方、JA管内以外の生産者向けにも、新たに梨花粉を供給する事業を始めることにした。 花粉採取の専用園は、市川市と船橋市に計約60アールを借りる。今後圃場整備を進め、今秋に花粉が多く採れる「松島」や「新興」、ネパール原産の品種などの苗木を植える。27年をめどに専用園の完成を目指す。専用園の規模拡大も検討する。 これとは別に、高齢化で果実の生産・出荷が困難な管内の生産者に対して、花粉採取専用園への転換も提案していく。 花粉採取には、花粉銀行で使う機械を活用する。全国の生産者から注文を受けて花粉を販売していく。 今回の事業について、JA経済部の角掛寛仁部長は「これまで培ってきた技術を生かし、全国の梨産地の維持に貢献したい」と意気込む。 農水省の推計では、梨では面積の3割で中国産花粉を使っている。(志水隆治)
<ことば> 火傷病
梨やリンゴ、ビワなどが感染し、枝や葉、花などが火にあぶられたように枯れ、木が枯死する場合もある。有効な防除方法は未確立で、感染した場合は伐採する。欧州地中海地域植物防疫機関(EPPO)によると、57カ国で発生。近隣国では韓国や中国などで発生している。
日本農業新聞