パリ五輪陸上トラックはイタリア製 紫の特注素材で世界新に期待
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【6月21日 AFP】今夏に開催されるパリ五輪の陸上競技では、イタリアのモンド(Mondo)社が製造する紫色の特注素材で造られたトラックが使用される予定で、スポーツ界最大の勝利を追求するアスリートにこれまでにない速さをもたらすかもしれない。 世界的に有名なワイン「バローロ(Barolo)」の広大なブドウ畑に太陽の光が降り注ぐ、伊ピエモンテ(Piedmont)州アルバ(Alba)。この静かな町に拠点を置くモンド社は、1976年のモントリオール五輪で初めて陸上トラックを製造した。 今回で13回目の供給となるパリ五輪に向けては、「モンドトラックEB(Mondotrack EB)」と呼ばれる特注の舗装材を考案し、スタッド・ド・フランス(Stade de France)で行われる陸上競技48種目中46種目で使用されることになっている。 第19回世界陸上ブダペスト大会(World Athletics Championships Budapest 2023)の女子100メートルを制したシェリカ・ジャクソン(Shericka Jackson、ジャマイカ)を筆頭に、陸上界最大のスター選手たちはこのサーフェスで五輪の栄光を目指す。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で2021年に延期された東京五輪の陸上競技では、男子のカールステン・ワーホルム(Karsten Warholm、ノルウェー)と女子のシドニー・マクラフリンレブロン(Sydney Mclaughlin-Levrone、米国)が制した400メートルハードルを含む3種目で世界新記録が生まれたが、モンド社によれば今回のトラックはそれを上回るパフォーマンスが期待されるという。 モンド社でスポーツ部門の副社長を務め、創設者2人のうちの1人を親に持つマウリツィオ・ストロッピアーナ氏は、AFPの取材で「東京(五輪)で使用されたものと比較して、トラック下層面のセルのデザインを変更した」「それによってアスリートのエネルギーロスが軽減され、その分が絶好のポイントで動作に還元できる」と述べた。 しかしながら、研究開発の責任者を務めるアンドレア・マレンギ氏によると、トラックの構造に関してモンド社が「何でも好きなように」できるわけではないという。 マレンギ氏は、「国際オリンピック委員会(IOC)が定めた非常に厳しい基準がある。なぜなら、最も重要なのはアスリートの健康を守ることであり、彼らの技術を損なわないことではないからだ」「アスリートのパフォーマンスはかつてないほどハイレベルであり、彼らが持っていないものでトラックが与えられるものは何もない」と説明した。 パリ五輪の陸上トラックは、従来のテラコッタ(土色)ではなく目を引く紫色となっている。マレンギ氏によると、競技エリアと技術エリアで違いがある二つの色合いは、パリ五輪専用で使用される予定だという。 十種競技の元選手でパリ五輪では陸上・パラ陸上の責任者を務めるアラン・ブロンデル(Alain Blondel)氏は、「われわれは独自の色を求めていた」「テレビ放送の際に、2色の紫が最大限のコントラストとなり、アスリートたちを際立たせる」と述べた。 2万1000平方メートル規模を誇る紫色のトラックはまた、これまでよりも多くの天然素材で造られており、通常と比べて「エコ」なものとなっている。 モンド社の持続可能性および革新の責任者であるジョルジオ・レサジェ氏は、「トラック資材のうち再生可能な資源とリサイクル素材は、2012年のロンドン五輪では30パーセントを少し超える程度だったのに対し、今回は最大50パーセントに上る」と胸を張った。 映像は4月に撮影。(c)AFPBB News