パリオリンピック男子バスケ日本対ドイツを千葉ジェッツ・原修太が考察「八村塁の凄みも再確認」
【凄みを感じさせた八村の役割と存在感】 ――先発は河村勇輝(PG)、吉井裕鷹(SG)、渡邊雄太(SF)、八村(PF)、ジョシュ・ホーキンソン(C)の5選手です。渡邊選手のケガもありこの5人では2試合目、実質、ぶっつけ本番となりました。まず鍵となる河村選手、八村選手の連係はどのように見ていましたか。 原 見ていて、いいな、と思ったのは、河村選手、八村選手がお互いにいい意味で自分がボールを持ちすぎないようにしていると感じた部分です。遠慮しているとか譲り合っているという意味ではありません。 八村選手は言葉にするまでもなく日本ナンバーワンプレーヤーですが、基本、ボールを持ってオフェンスを始めるのは河村選手でしたし、チームのなかでの役割に徹している印象でした。 トム・ホーバスHC、日本がやりたいバスケットのなかで、周りが八村選手ばかりにボールを集めたり、ポスト(にいる八村)にパスを落としたりばかりになっては、全体としていい動きにはなりません。日本がやりたいのは全員で、動いて、動いて、ピック&ロール(*)を使ってポップして(外側に行くこと)、ダイブして(リング方向に飛び込むこと)いくスタイルなので、その点ではよく実践できたと思います。 *攻撃側がふたりで行なう、基本的な仕掛け。ボールを保持した選手をマークしている守備選手に対して味方の選手が壁(スクリーン)となることから展開するプレー。ボールマンは守備選手をその壁にぶつけるように動くことで自らのスペースを生み出し、一方で壁となった選手は守備選手がぶつかってきたあと、リング方向に動いてパスをもらう動きをする。 僕自身、直接的な知り合いではないので「さすがだな」と言う表現が相応しいかどうかわかりませんが、八村選手がスーパースター集団のロサンゼルス・レイカーズで、ローテーション入りして活躍している理由がわかった試合でもありました。 言い方が少し難しいのですが、八村選手はレイカーズの攻撃オプションではレブロン・ジェームス、アンソニー・デイビスという超スーパースターがいるなか、3~5番目の役割でそれでも1試合20点取ったりしてきましたが、選手としての実力度がトップになった日本代表でも、レイカーズと同じ立ち位置で役割を果たしていたという意味です。 攻撃の第1オプションとして攻めるのではなく、河村選手や他の選手がダメだったら自分がいく。すごい選手だからこそ、2番目、3番目にいくよ、みたいな立ち位置です。そしてチームが厳しい状況の時には豪快なドライブダンクを決めて雄叫びをあげチームを鼓舞したり(第2クォーター)、第3クォーターでドイツのデニス・シュルーダー選手、ダニエル・タイス選手が3ポイントを連続で決めてきた時に連続3ポイントでやり返したり、自分が出るべき時は出ていく。 フィールドゴールの成功率はあまりよくなかったですが(19本中4本成功/21%)、相手が複数で止めに来ても力強いリングアタックでフリースローをもらい10本連続で決め、チーム最多の20得点をあげているわけです。 ワシントン・ウィザーズの時から凄さを感じていましたが、レイカーズでプレーしたことによってさらに凄みを増したことを、見ていて感じました。 ――あと、2番ポジション(SG)の役割で先発した吉井選手も、序盤からシュートをしっかり決めきり、ディフェンス、リバウンドでもいい働きをしていました。 原 吉井選手は毎試合そうなんでけど、人からボールをもらわなくてもフラストレーションを溜めずに自分の役割に徹する部分が長所なんです。自分から飛び込んでリバウンドを触りにいったり、リング方向にカッティングしたり、少ないボールタッチで仕事をする ドイツ戦でも右コーナーからリング下に飛び込み、河村選手からの届きそうにないパスをキャッチしてレイアップを決めていました。ディフェンスでも大黒柱のシュルーダー選手にマッチアップをしたり、Bリーグでも、世界王者のドイツ相手にも、自分の持ち味を発揮できるところがすごいと思います。 ――主将の富樫選手も任された時間のなかで効率的に得点を重ねました。 原 (富樫)勇樹もシュートタッチがよく、要所で得点を決めていました(14分23秒出場で5得点)。ただ、彼がコートにいる時は、5人の誰が悪いとかではなく、トップ位置(リング正面の3ポイントライン近辺)の狭いスペースに味方が3人くらい固まってしまったことが前半2回、後半1回くらいありました。すでにチーム内では気づいている部分だと思いますが、そこはチームで、勇樹が出ている時はもう少しお互いに確認して、河村選手が出ている時とは違う動きでできるよう、次の試合までに修正していったほうが良い部分だと思います。