『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』アニマトロニクスで再現した機械仕掛けのマスコットたち
ゲームのスケールを踏襲
最初の企画において書かれた、脚本家によるストーリー展開では、原作ゲームの設定を引き継ぎながらも、より豪華なエンターテイメントらしく、脅威のスケールが飛躍していく仕掛けが用意されていたという。しかし、ゲームの原作者スコット・カーソンは、あくまでも映画を原作ゲームのファンが喜ぶようなものにしたかったため、その脚本を却下してゲームの設定を逸脱しない内容で、あらためて草稿を書いたのだという。 「ブラムハウス・プロダクションズ」での製作においては、そんな原作者の定めた基本線を守りつつ、長編映画として成立させるべく脚本に肉付けをしていった。それを担当したのが、本作の監督エマ・タミと、脚本家のセス・カデバックだった。 この脚本では、主人公が少年時代の事件から立ち直れず、精神的な問題を抱えながら年の離れた妹を養わなくてはならない青年に設定された。そして、妹の養育権をめぐる裁判や、生活費などの問題に迫られ、ピザレストランの深夜警備を引き受けるという展開が用意されている。 この青年マイク(ジョシュ・ハッチャーソン)には、警備の仕事を続けることによって妹アビー(パイパー・ルビオ)との生活を守るという目的がある。そして、彼が心の奥で取り戻すことを求めていた、“家族の団欒”を勝ち取ろうといった、観客が共感できるだけのゴールが設定されることとなった。そこには、恵まれた環境が与えられなかった若者が、社会に出ることで直面する諸問題や、仕事をして生活を成り立たせることへの重圧も投影されている。 マスコットから連日襲われるといったゲームの内容からはややズレたものの、あくまでピザレストランを中心に、物語の規模をむやみに広げることなく、登場人物の描写の部分で奥行きと膨らみを持たせた脚本は、原作者の気に入るところとなった。その意味で本作は、比較的こぢんまりとした印象にはなったものの、ゲームのスケールを踏襲したことで、好感が持てる内容となったのだ。もちろんこれは、一つの選択の結果であって、原作を持つ映画作品が選ぶべき唯一の正解、というわけではないことにも留意しておきたい。
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