問題山積、石破首相の双肩にかかる重圧 安倍元首相提起「核問題」は棚ざらしのまま…緊張高まる国際情勢
【自民党新総裁への期待と直言】 元国家安全保障局次長・兼原信克氏 石破茂首相(自民党総裁)が誕生した。日本の政権交代をよそに、国際情勢はますます緊張の度合いを高めている。 【石破新内閣の顔ぶれ】俳優、配管工、元刺客…異色の経歴持つ閣僚も ウクライナ戦争は膠着(こうちゃく)したまま消耗戦の様相を呈しており、イスラエルはガザ地域から南レバノンへと戦線を拡大しつつある。中国の経済成長は減速したとはいえ、その急激な軍拡は止まる気配がない。習近平国家主席は「強国思想」に取りつかれ、台湾の武力併合に備えて、米国と対峙(たいじ)できる軍事大国を目指している。 石破首相の双肩にかかる責任の重圧はすさまじい。 戦後の日本は、絶対権力であったGHQ(連合国軍最高司令部)に翻弄され、東西冷戦の狭間で厳しい国内分断に苦しんできた。自民党は、米国との同盟を掲げ、防衛力整備、高度経済成長、福祉国家を実現した。 ところが、西側世界の主要政党の中で唯一、東側に軸足を入れた日本社会党は、自民党と安保政策で先鋭に対立した。非武装中立を掲げた社会党は、政府・自民党の安保政策に「何でも反対」であった。 非武装中立とは、モルドバやトルクメニスタンのように、ロシアに隣接する衛星国家として、軍事的に丸裸になって、決してモスクワの利益に反しない外交政策をとるということに他ならない。それは、政府・自民党の外交安全保障政策と相いれることのできないものであった。 冷戦中、国会の予算委員会を舞台に繰り返された保革激突は、しばしば日本の外交安全保障政策を麻痺(まひ)させた。 ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が名著『国際秩序』(日本経済新聞出版社)の中で述べている通り、西側の一員であるはずの日本は、実は、形だけ冷戦に参加していると思われていたのである。 冷戦が終了し、日本の外交・安保政策は急速に進展した。特に、第二次安倍晋三政権では、自由で開かれたインド太平洋構想、NSC(国家安全保障会議)設置、特定秘密法制定、平和安全法制制定、反撃力導入、新防衛装備輸出三原則の策定などが矢継ぎ早に進んだ。 続く岸田文雄政権では、防衛費倍増、経済安全法制制定へと、さらに日本の安全保障を前に進めた。