周期は約1時間 観測史上最も自転が遅い中性子星「ASKAP 1935+2148」を発見
■中性子星の謎を探るミッシングリンクとなる可能性
ASKAP 1935+2148から放出される電波の性質は、同じく中性子星ではないかと考えられている長周期の電波源GLEAM-X J162759.5-523504.3やGPM J1839-10と極めてよく似ています。もしもASKAP 1935+2148が中性子星だと確定した場合、知られている中で最も自転周期の長い中性子星となるでしょう。 今回のように周期が極端に長い電波源は時々発見されていますが、ほとんどの正体は謎のままです。例えば天の川銀河の中心部にある約77分周期の電波源「GCRT J1745-3009」は、2002年の発見以来その正体が不明のままです。約53.8分周期のASKAP 1935+2148の周期は、より短いGLEAM-X J162759.5-523504.3やGPM J1839-10と、より長いGCRT J1745-3009のちょうど中間あたりに位置します。このため、ASKAP 1935+2148の研究はさらに周期の長い電波源の正体を探るミッシングリンクとなるかもしれません。 また、先述の通り、周期が数十分という極めて長い中性子星からどのようにして電波が放出されるのかは大きな謎となっています。ASKAP 1935+2148の研究を通じて、宇宙で最も高密度な物体の1つである中性子星の性質について、さらに理解が深まるかもしれません。 Source Manisha Caleb, et al. “An emission-state-switching radio transient with a 54-minute period”. (Nature Astronomy) Jessica Marsh. “Scientists detect slowest-spinning radio emitting neutron star ever recorded”. (The University of Manchester)
彩恵りり / sorae編集部