予算委員会はなぜ予算以外の議論をするの? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
スキャンダルや失言の追及も
閣議決定した「予算書」はエリート官庁の財務省の、これまたエリートの主計官を中心に「日本で一番厳しい校閲を経た書類」として出されます。 一個所が決壊するとドミノ倒しのようにあちこち矛盾が生じるため、内閣はどうしても原案通りに可決したいのです。そして、それは難しくありません。 というのも首相を選ぶのもまた「衆議院の優越」規定があるため、衆議院の多数派が首相を担ぎます。多数がそもそも首相の味方なので途中曲折があっても採決になれば賛成多数になるに決まっているのです。 つまり予算そのものについて無駄を指摘したり、理由を述べて金額の増減を求めたり、あいまいな表現をただしたりしても、たいてい上手にかわされて終わりです。なので責める側の野党は「こんな内閣の作った予算案を信用できるのか」という格好でスキャンダルや失言を追及したり、「態度がなっていない」などと理事に文句をつけて引き延ばしをはかったりして「成果」を得ようとすることがあります。 内閣にとって3月末までの成立は至上命題。それができないと大変みっともない非力な内閣とみなされるので、野党が強い状況や痛いところを握られている場合は、問題大臣のクビと引き替えに審議促進を非公式に伝えるといった手段に出ることもあるのです。「予算を人質に揺さぶる」という行為です。つまり予算委員会は華々しい割に「出来レース」との指摘もあります。 --------------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】