予算委員会はなぜ予算以外の議論をするの? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
衆院予算委員会で31日から与野党による本格論戦が始まりました。 言うまでもなく何かをするにはお金が要ります。それは国のサービスも同じ。なので毎年1月必ず開かなければならない「通常国会」で新春から3月末までのうちに国が見込んだ収入(歳入)と使い道(歳出)の見積もりを憲法の規定で「内閣」が「作成して国会に提出する」のが予算案です。当然、国会で予算案の良し悪しを議論するわけで、ここで注目されるのが「衆議院予算委員会」。国会には最終決定する本会議があるのに、なぜその下にある「委員会」が脚光を浴びるのでしょうか。またもう1院である参議院が衆議院ほど目立たないのはどうしてか……などを考えていきます。 【動画解説】予算はどうやって作られる?
具体的な質問は「予算委」で
予算委員会は衆議院と参議院のいずれにもおかれる常任(常に設ける)委員会です。予算案の場合は通常国会の冒頭にある首相の施政方針演説で年間の方針が語られた後、国の財布を預かる財務省トップの財務大臣が財政演説という形で示します。その後に与野党各会派の代表による質問があります。ただここまでの演説や質問は「言いっ放し」。具体的な問答は次に開かれる予算委員会となるのです。 委員は衆議院で50人。会派の大きさに合わせて割り当てられ、なかから委員長が理事を選びます。だいたい1院で3、4週間程度審議されて採決されます。
衆院予算委が「特別」な理由
法律案は原則として衆議院・参議院どちらに出しても構いません。しかし予算案は衆議院が先(先議)と決まっています。通常国会前半最大の課題は予算で、質疑のスタートが衆議院予算委員会なので必然的に注目が集まります。 予算案はあらゆる国家機関の見積もりで内閣の責任で出されるため、答弁に立つべき国務大臣も原則全員出席。問いただす側はたいてい事前に「質問通告」をしているので、その通りに進めば「今日は出席しないでも大丈夫な大臣」がいます。しかし絶対に通告以外の質問をしてはいけないという決まりもないので「全員出席」になりがちです。となると予算委以外の委員会に大臣が出席できないため、結果的に予算委優先、予算委のみ開催となります。「当日の国会=予算委」となればテレビ中継の対象もそことなるわけです。 予算は提出者も執行者も内閣。ゆえに国務大臣および長である首相がどういう姿勢で1年間を過ごすつもりかまで話題となります。例えば開催中のある日、ある場所で大火事があったとして、質問者は当然、首相や総務大臣(消防を統括)に考えを聞くわけです。閣僚のスキャンダルが報じられれば予算の執行者としての責任を問うという理由でやはり対象となるでしょう。結果的に予算委が「何でもあり」になるゆえんです。 衆議院の予算委が特別な理由はまだあります。採決して可決し本会議も通ると参議院に送られます。その結果が否決や修正となったとしても、最終的に衆議院の議決で決まります。いわゆる「衆議院の優越」規定で先に述べた先議権もその1つです。