週末などにテレビのチャンネルをザッピングしていると、ふと釣り番組が目にとまる。私自身、釣りの趣味を持っているわけではないのだが、時々出演者が魚を釣り上げるシーンを、食い入るように見てしまうことがある。 ある日曜の夕方、例のごとくチャンネルを切り替えていたところ、思わず手が止まった。画面の向こうでは俳優の照英さんが、八丈島の荒波に浮かぶ船上でオナガダイと格闘していた。 オナガダイは地元で「乙姫」と呼ばれている深海の魚で、海深く垂れた釣り糸は相当に長い。途中、糸を巻き上げる電動リールが電源のトラブルによって作動しなくなった。 照英さんは手動で根気よく延々と巻き上げていく。そうして、ようやく釣り上げたオナガダイは破格の大きさだった。鮮度抜群の刺し身や煮つけ、レモンをちりばめた鍋料理にして舌鼓を打つシーンに、魚が大好物の私は思わず舌なめずりをしてしまった。 番組は各界で活躍する著名人が、全国の釣りスポットを訪ねる「釣りびと万歳」（NHKBS、BSプレミアム4K）。カンパチ、ブリ、マダイ、アオリイカなど、季節ごとの旬の魚があの手この手で釣り上げられる過程もさることながら、その釣果を刺し身や焼き物、椀物にし、いただく様子は見ているだけで満足感を得られる。 釣り番組は実は、ドキュメンタリータッチのものから、穴場を紹介する情報系まで、意外なほどジャンルに富んでいる。調べてみると、関西ローカルだけでも実にさまざまな趣向を凝らした番組があった。 釣り好きの漫才コンビ「オール阪神・巨人」のオール阪神さんが出演するサンテレビ「ビッグ・フィッシング」（木曜夜）は昭和59年から続く長寿番組だ。サンテレビではこのほか、ルアーフィッシングの魅力を伝える「The Hit」（水曜夜）も放送されている。 テレビ大阪「ガッ釣り関西」（土曜朝）は、関西のさまざまな釣り場を紹介する番組だ。淡路島ではメバル、家島諸島はアジ、若狭湾でマダイが釣り上げられるシーンに、春の魚がおいしい季節を迎えていることを実感する。 海から四季折々の旬を届けてくれる釣り番組を見ていると、改めて日本は海の幸に恵まれた海洋国家なのだと思う。（由）