世界遺産「軍艦島」の過去と現代を結ぶ壮大ドラマ「海に眠るダイヤモンド」、脚本家・野木亜紀子が手掛ける新たな手法
もつれあう恋愛関係
第2回「スクエア ダンス」(11月3日)に至って、いづみと令央の距離は縮まっていく。 玲央が路上で売掛金を支払わない女客と出会って、もめた末に警察官に捕まる。いづみは執事に警察に行って怜央を引き受けさせたうえに、自宅に連れてくる。朝食をともにするまでになった。 いづみがかつて好きだったひとが、玲央と似ている話に及んで。「いづみさん、恋愛したことあるんだ。三角関係とか?」 「恋は衝動、愛は寛容、別れは暴走」と、いづみは答える。三角関係は否定しない。 端島は、台風の直撃を受ける。島の水は1日3回本土から運ばれてくるが、それも絶えた。本土と結んでいた電源も。 台風が来る前、百合子(土屋太鳳)はリナ(池田エライザ)の部屋を訪れて、「スクエア ダンス」のクラブを立ち上げる相談をする。百合子が休日に長崎に遊びにいった時に、たまたま入ったダンスの講習会がヒントになった。 リナは自分の荷物のなかから、ジャズのレコードを引っ張り出して、ハミングで曲を歌って聞かせるのだった。百合子は気に入った。 問題は、男女の組み合わせである。島内で食堂とパン屋を営む娘の朝子(杉咲花)と、鉄平(神木)はどうか、とリナ。百合子は答える。「朝(子)ちゃんは鉄平が好きなのは誰でもわかる。でも、鉄平は鈍いから気づかない」と。 そして、こういう「リナが鉄平と組んだらいい。そしたら、朝ちゃんは鉄平を諦める。私って、性格悪いんよ」。
「水」でつながる時代
台風の暴風雨のなかで、リナは防波堤に近づいて、鉄平の兄・進平(斎藤工)がしばしば海を見つめているところに向かう。大きな波が襲い、進平はリナをからだごとぶちあたって守る。リナは進平を見つめる。 進平は、かつて妻を台風の波に飲まれてしまった。まだ、その死を受け入れていない。妻が島のごみ集めとそれを捨てに来ていた、海辺でいつも遠くを見やっている。 今回の台風の前に、リナがその理由を尋ねた。「海の地下1000mには、石炭が眠っている。海には石炭の幽霊が出る」と。 2018年の東京――いづみの自宅で、玲央がいづみに尋ねる。「端島では水が不足していたから、水を飲むとさぞかしおいしかったでしょうね」 「島の水なんて、塩素臭くって。こうして、浄水器を通した水がおいしいだろうね」と、いづみ。今回のエンディングでは、百合子(土屋太鳳)がひしゃくですくった水を飲むシーンで終わる。 今年のドラマのなかでは、ベスト3位に入るのは間違いなさそうである。
田部康喜