12年ぶりの首位に立ったセレッソ大阪はなぜ強い?
最後のキーワードは「破壊」だ。下部組織出身者が多いセレッソは、幾度となく「仲良し集団」と揶揄されてきた。気心が知れるゆえになれ合い、ここ一番で甘さや緩さが出て勝てない。1995シーズンからJ1に参戦しながらタイトルに無縁だった負の歴史に、ユン監督はメスを入れた。 アプローチはサガン時代と同じ。キャンプでは3部練習を頻繁に組み、フィジカルを徹底的に鍛えていく過程で甘えを排除する。サガンで指導を受けている水沼は、新チームが始動するときにユン監督と話し合いの場をもっている。 「ユン監督のやりたいことや、いままでのセレッソの緩い感じをみんなに伝える役になってほしいと言われました。ただ、ちゃんとやろうとなったときに、しっかりとできる選手がそろっている。いまの結果が出るのも、必然なのかなと思っています」 ハリルジャパンの常連であるMF山口蛍や清武、元代表の柿谷曜一朗をはじめとするタレントたちが覚悟を決めたとき、指揮官が掲げた「破壊」はいい意味でセレッソを変えた。中断前にあげた2試合連続の逆転勝利には、勝負強さや雄々しさといったいままでにない要素が脈打っていた。 12年前は首位で臨んだ最終節の後半終了間際の失点で引き分け、ほぼ手中に収めていた優勝を逃した。翻って、まだ16試合も残す今シーズンはまだ道半ばだと山口も強調する。 「追うほうが楽。これ(首位)を維持するほうが難しいと思うので」 前半戦は進化の跡を存分に示した。8戦連続負けなしのまま突入する後半戦では、新生・セレッソの真価が問われる戦いが待っている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)