元・大手証券マンが教える「株の売り時・買い時」…投資初心者でもわかる“サイン”とは
日本株で勝つには、どうすればよいのか。本稿では、渡部清二氏の著書『プロ投資家の先を読む思考法』(2023年12月刊行、SBクリエイティブ)より一部を抜粋し、市場の先読みをする投資判断の方法を紹介します。株価チャートは基本的に、(1)ローソク足、(2)出来高、(3)テクニカル分析指標の3つで構成されています。前回記事では(1)について説明しました。本稿では(2)(3)を見ていきましょう。
出来高
出来高とは売買が成立した株数のことをいいます。出来高が多ければ多いほど、その株の取り引きが活発に行われているということです。つまり出来高を見れば、投資家のその株に対する注目度がわかるというわけです。 ただし、出来高だけで売買の判断をすることはできません。必ず株価の動きとあわせて見るようにする必要があります。 ■安値圏での出来高急増は「買い」のサイン 人気のない株が安値圏で急増したときは、買いサインと考えてください。 普段、注目を集めることのない株の出来高が増えているということは、それなりの理由があります。何らかの材料が出て買いたい人が大勢いるということだからです。 とはいえ、一時的なものでもある可能性があるので、注意が必要です。こちらに関しては、『会社四季報』のチャートからも読み取ることができます。 もっと注意しなければいけないのが、大型株の出来高が高値圏にあるにもかかわらず急増した場合です。買いたい人が大勢いる一方で、利益を確定するための売りが大量に出ている可能性があります。 そんなときにつられて買ってしまうと、株価がピークに達する可能性が高く、いわゆる「高値づかみ」になってしまいます。
テクニカル分析指標(移動平均線)
テクニカル分析とは、過去の市場の動きを分析することによって、将来の市場の動きを予想する方法です。 テクニカル指標をチャート上に表示することによって、相場の節目やトレンド、売買のタイミングなどを分析することができます。 テクニカル分析に役立つ指標はいくつもありますが、今回はもっともわかりやすい移動平均線についてご説明します。 移動平均線とは、一定期間の株価の平均を結んだ線のことをいい(図表1)、ローソク足とあわせて使うことで、トレンドや売買タイミングを予測するのに役立ちます。 移動平均線は、その期間によってさまざまな種類があります。 ・日足(ひあし) 5日、10日、25日、75日、200日 ・週足 13週、26週 ・月足 12ヵ月、24ヵ月、60ヵ月、120ヵ月 これらのうち、一般的にトレンドを見るのに使われるのは次の期間です。 ・短期トレンド 5日、25日、75日 ・中期トレンド 13週、26週 ・長期トレンド 12ヵ月、24ヵ月 ■「買い」を示すゴールデンクロス、「売り」を示すデッドクロス 移動平均線が表すシグナルのうち、トレンドの転換点として比較的初心者の方でもわかりやすい「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」についてご説明します。 ゴールデンクロスとデッドクロスは、ともに移動平均線によって示されるトレンド転換のポイントです。 ゴールデンクロスは、短期移動平均線が中期・長期移動平均線を下から上に突き抜けることで、上昇トレンドへの転換の可能性を示します。これが出たら「買い」のタイミングのシグナルと考えてください。 逆にデッドクロスは、短期移動平均線が中期・長期異動平均線を上から下に抜けることで、下降トレンドへの転換の可能性を表しています。これが出たら「売り」のタイミングのシグナルといえます。 みなさんもぜひ『会社四季報』のチャートを見ながら、ゴールデンクロスやデッドクロスを探してみてください。 実際に自分で調べてみることで、知識が身につきやすくなります。一見するととっつきにくいテクニカル分析が身近に感じられ、「もっと高度な分析方法を知りたい」と思うようになっていくことでしょう。 渡部 清二 複眼経済塾 代表取締役・塾長 1967年生まれ。1990年筑波大学第三学群基礎工学類変換工学卒業後、野村證券株式会社入社。個人投資家向け資産コンサルティングに10年、機関投資家向け日本株セールスに12年携わる。野村證券在籍時より、『会社四季報』を1ページ目から最後のページまで読む「四季報読破」を開始。26年以上継続しており、2023年秋号の『会社四季報』をもって、計104冊を完全読破。 近著に『会社四季報の達人が全力で選んだ 10倍・100倍になる! 超優良株ベスト30』(SBクリエイティブ)、『株主総会を楽しみ、日本株ブームに乗る方法』(ビジネス社、複眼経済塾としての書籍でもある)などがある。
渡部 清二