恐竜の体の色復元は可能か(上) 化石記録におけるデータの限界
地球は46億年前に誕生したといわれています。そして生命は約40億年前に生まれ、わたしたちホモ・サピエンスの種が初めて現れたのは、およそ20万年前。地球の長い歴史を1年に置き換えた場合、人類は12月31日午後11時半過ぎにようやく出現したと例えられるほど、わたしたち人間の歩みは実は、とても短いものです。 人類出現まで、地球はどのように環境を変え、生き物はどのように進化してきたのか―。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が、世界の最新化石研究について報告します。 ----------
1993年に公開された映画「ジュラシック・パーク」(Jurassic Park)。さまざまな恐竜が非常にリアルな姿で登場した。公開当時に非常な話題となったことを今でも覚えている方も多いのではないだろうか。(後にこの映画から直接影響を受けて古生物研究への道を志したという方に、私は何人かあったこがある。)メインキャストである大型肉食恐竜ティラノサウルス、竜脚類ブラキオサウルス(現在ジラフタィタンと呼ばれている)、そして小型で獰猛なヴェロシラプトル(「ラプトル」は俗称)の姿は、確かになかなかのインパクトがあったのかもしれない。 しかし、一連のこうした最近の恐竜映画の中で、恐竜たちが実際「どんな体の色」をしていたのかはっきり覚えているだろうか? 何千万年も前に死に絶え、現在化石しか直接の情報源のない中生代の(鳥類を除いた)恐竜類。その化石のほとんどが骨格か足跡のものだ。「どうすればやって体の色を復元しているのか?」 こう疑問に思ったことのあるあなたは、化石研究者及びサイエンティストとしての眼と心構えを十分備えているといえる。 一恐竜研究者として推測させていただくと、先述のような恐竜映画を作る際、映画スタッフは恐竜研究者などに(おそらく)相談したはずだ。カラー映画で、華麗なCG(コンピューター・グラフィック)をふんだんに用い、恐竜のリアルさをとことん追求する時、体の色を無視するわけにはいかない。「登場するたくさんの恐竜のボディーカラーはどのようにすればいいのだろうか?」 全ての恐竜が同じ色をしていたことは(おそらく)なかったであろう。果たしてどうすれば「色の復元」が可能なのだろうか?