自動車部品メーカー・アイシン、リアルタイム⾳声認識アプリ開発でコミュニケーション支援
工場や列車内などでも音声を認識
――YYProbeの技術的な革新点と、他製品との大きな違いは何ですか。 ワイワイシステムアプリシリーズの一製品であるYYProbe(ワイワイプローブ)は、特に騒音が多い環境下での音声認識精度において自信があります。工場や列車内などの騒々しい環境でも高い認識精度を実現しています。また、開発プロセスにおいては、障害当事者と共にアプリを開発していきました。 例えば、対面でのコミュニケーションを支援するための画面分割機能や、LiD/APD(聞き取り困難症/聴覚情報処理障害)を持つ方々のために開発されたAI要約機能などです。 これらの機能は、障害当事者の方々からのフィードバックに基づいて、実際のニーズに応える形で開発しています。この開発スタイルを評価いただき、2023年のグッドデザイン賞金賞を受賞させていただきました。 音声認識の正確さや開発の迅速性に関しても、多くの方から高い評価を受けています。特に、新機能の要望に対して翌日にはリリースするなど、私たちの迅速な対応は利用者から喜ばれています。一方で、オフラインで使用できる音声認識エンジンについて、認識精度の向上が今後の課題です。 ――ワイワイプローブの音声認識技術は、どのように社会に貢献しているでしょうか。 ワイワイプローブは、日常生活で簡単に、当たり前に使える技術の提供を目指しています。私たちの目標は、単に新しいサービスを提供することではなく、人々が日々喜んで使い続けるような製品を作ることです。 特に、障害当事者が情報を簡単に理解できるよう、文字での情報表示を含むさまざまな支援を行っています。これによって、障害を持つ人々だけでなく、彼らの周囲の人々の生活も豊かにしていると考えています。 また、社会的マイノリティの方たちの社会進出を、テクノロジーによって補助することで、より質の高い仕事に取り組めるようになり、日本の労働力不足という問題に対しても貢献していけるのではと考えます。 ――音声認識技術サービスは、将来どのように進化するでしょうか。 音声認識技術サービスが市場で一般的になり、より手頃な価格で提供できるようになると予想しています。これにより、より多くの人々にサービスが普及し、新たなサービスの提供ができると考えています。 当面の目標としては、音声認識の精度をさらに高め、生成系AI技術の活用を深めることに集中しています。特に、聴覚障害者特有の発話パターンを学習させ、それを機械音声で再現することも検討中です。 将来的には、災害時など緊急事態に障害当事者を支援する機能や、彼らがより幅広い仕事をこなせる技術の開発を目指しています。技術を通じて誰もがアクセスしやすい包括的な社会を実現していきたいと考えています。 ■伊藤 芳浩 (NPO法人インフォメーションギャップバスター) 特定非営利活動法人インフォメーションギャップバスター理事長。コミュニケーション・情報バリアフリー分野のエバンジェリストとして活躍中。聞こえる人と聞こえにくい人・聞こえない人をつなぐ電話リレーサービスの公共インフラ化に尽力。長年にわたる先進的な取り組みを評価され、第6回糸賀一雄記念未来賞を受賞。講演は大学、企業、市民団体など、100件以上の実績あり。著書は『マイノリティ・マーケティング――少数者が社会を変える』(ちくま新書)など。