「主演しかやらない女優」だけで作られた映画『8人の女たち』フランソワ・オゾンに脱帽!『私がやりました』も最高でした
1989年に漫画家デビュー、その後、膠原病と闘いながら、作家・歌手・画家としても活動しているさかもと未明さんは、子どもの頃から大の映画好き。古今東西のさまざまな作品について、愛をこめて語りつくします!(写真・イラスト◎筆者) 【1コマ漫画】踊る大女優たち * * * * * * * ◆どうしても劇場で見たい作品 第二回『8人の女たち』(2002) 監督・脚本 フランソワ・オゾン 音響 ピエール・ガメ 衣装 パスカリーヌ・シャヴァンヌ 出演 カトリーヌ・ドヌ―ヴ エマ二ュエル・ベア―ル イザベル・ユペール ファニー・アルダン ヴィルジニー・ルドワイヤン リュディヴィーヌ・サニエ ダニエル・ダリュー フィルミーヌ・リシャール この映画紹介記事を書きたいと思ってから、足繁く映画館に通っている私。私は作家で画家なので、基本的に引きこもり。しかも体が弱いので、着替えて電車に乗るのがめっちゃ重労働。だから大抵の映画は、「1年待ってDVDで見よう」と思うのが常でした。 でも、今回のフランソワ・オゾン作品『私がやりました』は、どうしても劇場で見たくって! 公開初日は渡仏中だったので、帰国後すぐに映画館に駆け込みましたが、見たらもう「最高!」な出来映え。 ただこの記事のアップの頃は、地方上映も終わっていると思ったので、私が初めて見たオゾン作品、『8人の女たち』をご紹介いたします。 『8人の女たち』は2002年に日本全国劇場公開になった作品です。とにかく出演女優が豪華! 「映画と言うよりもはや事件!」と、コピーにあるように、冒頭に並べた有名女優が共演した映画です。
◆豪華キャストによる極上ミステリー フランス映画を余り知らない方でも、『シェルブールの雨傘』や『昼顔』の主演女優、カトリーヌ・ドヌーヴはご存じでしょう。エマニュエル・ベア―ルは『美しき諍い女』のような文芸作品から、『ミッション:インポッシブル』のようなアクション映画にも出演する美女。今回は生意気でツンツンした態度が最高でしたね。 イザベル・ユペールは通好みの女優で、『主婦マリーがしたこと』でヴェネツィア国際映画祭女優賞。2023年の『私がやりました』でも痛快な「落ちぶれた元スター女優」を熱演しています。ファニー・アルダンは2002年に『永遠のマリア・カラス』でカラスを演じ、当たりまくったお方。 要するに「主演しかやらない女優」だけで作られた映画ってことで、この女優たちを料理した「オゾンってすごくない?」となるわけ。 さて、本編は基本ミステリー仕立て。舞台は雪に閉ざされた、いかにもブルジョワ家庭の豪華な屋敷。 クリスマス休暇で帰ってきた大学生の娘を皮切りに家族関係者が集まり、新旧のメイドを交えてストーリーが進行します。 8人の女たちが集まると、その家の主ことマルセルが殺害されていることが発覚。次女のカトリーヌが警察に電話しようとするも、電話線が切られていて、大雪のために車を動かすこともできない。絶海の孤島と化した屋敷。その日の未明までマルセルは生きていた。ならば8人の女たちのうち誰かが犯人…。 筋自体はアガサ・クリスティーのような古典的ミステリー。携帯や防犯システムが発達している現代なら事件にもなりえないことが、1950年代ならこじれてミステリーになります。