アメリカの若者たちの間で、「現金」での買い物がトレンドに…現金は「クールな新発明!」と盛り上がるワケ
若い世代にとって現金は「クールな新発明」
「靴を買うのに20ドル札を8枚出せば、画面上でカードをタップするよりリアルに感じられる」と言うのは、クレジットカードの選び方や使い方をアドバイスするカードレーツ・ドット・コムのエリカ・サンドバーグだ。 多くのZ世代は、親の世代も現金よりカードを使って育った。そのため現金を使うことが目新しくて夢中になると、サンドバーグはみている。若い世代にとって現金は「クールな新発明」だと彼女は言う。 「キャッシュ・スタッフィングが古典的な手法になったのには理由がある。効果的だからだ」とサンドバーグは語る。「特定の期間の使途別の予算を決め、現金を封筒に入れる。それがなくなったら、次に現金を入れるまで支出できない」というシンプルさが効いていると、彼女は指摘する。 一方で、黒人が所有する銀行としては全米最大であるワンユナイテッド銀行のテリ・ウィリアムズ頭取は、アメリカの黒人は銀行に対する長年の不信感から、現金をよく使っていると語る。 「黒人コミュニティーでは、現金を使う割合が以前から高かった」と、ウィリアムズは言う。 「黒人には歴史的に銀行への不信感があり、現金を手元に置くほうが安全だという認識がある。私たちは現金を保有することについての顧客の関心を理解し、尊重している。デジタルバンキングには多くの利点があるが、現金を使うことで若い世代は『リアルなお金』で支払っていることを理解し、支出に上限を設ける必要を認識できる」 多額の現金を自宅で保管することに懸念を抱く人もいる。「金融についてきちんとした教育を受け、まともなツールを持っていなければ、キャッシュ・スタッフィングは特に資産を増やすためには使い続けられない」と、未公開株式投資会社オルタナティブ・ウェルス・パートナーズのケリー・アン・ウィンゲットCEOは言う。 「インフレ率が高まれば、封筒に入れたままの現金は日々価値を失う」 TikTokでも人気の経済評論家エリカ・クルバーグは、現金を使う人は銀行が提供する保護の一部を放棄していると言う。「デジタルマネーの利用をやめるのには懸念がある」と彼女は語る。「現金取引は面倒だし、デジタル決済のように詐欺を防止する機能もない」 エクスペリアンのグリフィンは、現金ばかり使う若者はクレジットスコアが高くならないため、住宅購入のような将来の機会をものにできない可能性があると言う。 「若い世代には遠いゴールに思えるだろう。でも若い時のお金の使い方が、そんな目標を実現させたいときに影響してくる」
アリス・ハイアム