初孫の愛らしさに身もだえる堅物おじいちゃんの奮闘記『じじいくじ ~元最強刑事の初孫育児~』【書評】
真面目で一本気な鬼鉄の性格も、赤ちゃんに振り回される立場としていい味を出している。なにより、父と娘の関係性がとてつもなく、いい。命がけで子どもを産んだ娘へのリスペクトと気遣い、愛する娘の力になってやりたいと願う鬼鉄の心が、読者に出産と育児の偉大さを語りかけてくる。
そして愛する娘が産んだ宝物……「孫」を愛でているおじいちゃんの姿をみると、なぜだか胸をギュッと締めつけられてしまう。もしかすると、人類にはおじいちゃんと孫の組み合わせに心を奪われてしまうDNAが組み込まれているのかもしれない。 例えば、祖父の立場から孫への愛情を歌った大泉逸郎の名曲「孫」は国民的大ヒットとなり、発売から20年以上がたった今でも歌い継がれている。『ちびまる子ちゃん』(さくらももこ/集英社)の友蔵とまる子のコンビは、微笑ましいおじいちゃんと孫の姿の代名詞だ。鬼鉄やそれらのおじいちゃん達から感じるのは、見返りを求めない愛である。元気に育ってくれさえすればそれでいいのだ、という無償の愛情が、わたしたちの心に響いているのかもしれない。
おじいちゃんが育児に奮闘する、という現代的なテーマに挑戦した『じじいくじ ~元最強刑事の初孫育児~』。汗をかきながら頑張る鬼鉄の姿にクスッと笑えてほろっとさせられる、面白い育児マンガとなっている。ぜひご実家のリビングで、家族みんなで楽しんでいただきたい。 文=ネゴト/ あまみん