昨年オフには複数年契約を巡って交渉がなされたとの情報も飛び交ったが、最終的には単年の現状維持の2億1000万円でサインして、FAの準備か？と噂も立った。「1年、1年が勝負」とその理由を明かしたが、一方で「野球をしている以上、どこでしたいかは人それぞれあると思う」と意味深なコメントも残していた。 　だが、日本シリーズの大不振は、シーズン中にも同じことが起こるのではないかとの危惧が生まれた。守りだけなら小林がいる。 　これまで巨人のFA補強に大反対だった広岡氏は、チームが検討しているFAの解禁については、こんな意見だ。 「4年ぶりにリーグ優勝もした。この4年は、FA補強せずに若い選手を育成しようという形は見えてきた。まだ育ったとは言えないし、層は薄い。クライマックスシリーズでもその弱さが顕著に表れた。ドラフトで取った生え抜きの選手を徹底した指導で鍛えあげて、レギュラーに育てるというジャイアンツの基本方針を忘れてはならない。だが、菅野が姿勢と結果で若手投手陣を引っ張ったように、若手の手本になる選手という観点で、そろそろFA補強を解禁しても悪くはないのかもしれない」 　珍しく一定の理解を示したが、一方で、広岡氏は、こうも言う。 「誰を獲得しようとしているかはしらんが、FA補強した選手を使えば、若手の選手の枠が一つ減るわけだからそれ相応の理由のある選手を獲得する必要がある。獲っても、ここぞという場面で打てず、チームが変わらないような選手では意味がない」 　広岡氏は具体名に言及しなかったが、暗に甲斐の獲得に対しての疑念を示した。 もちろん短期決戦とレギュラーシーズンの成績は別もの。巨人の甲斐に対する評価は、日本シリーズの結果で変わることはないのだろう。 「盗塁阻止率が落ちたとはいえ、スローイング、キャッチング、ブロッキングの基礎技術に配球などのリード面などトータルで考えると球界トップクラスの捕手。今季は5本塁打に終わったが、2桁を打てるポテンシャルもある。あくまでも日本シリーズの打撃成績は短期決戦特有のもので、シーズンで考えると心配はないだろう」というパ・リーグOBの野球評論家の声もある。 　今日5日からFAの申請がスタート。まず巨人が獲得するかどうかより日本シリーズの結果を受けて、甲斐がFAを行使するかどうかが最重要問題。スポーツ各紙の報道によると日本シリーズ敗戦後に甲斐はFAを行使するかどうかの意向をハッキリと示さなかった。FA権の有資格者は、在籍チームに意思を伝えればFA権を行使でき「FA宣言選手」として14日に公示され、翌15日から他球団（旧球団を含む）との交渉が可能となる 　(文責・駒沢悟/スポーツライター)