なぜ稲葉監督は不振の坂本を2番で起用し復活ドラマが生まれたのか?「勇人の努力を野球の神様が見ている」
昨日の段階では、「2番・坂本」、「3番・丸」の「巨人での打線の並びを考えた」そうだが、この日の昼過ぎになって変更を「ひらめいた」という。つなぎにテーマを置き、「2番・坂本」に、米国戦で3打席連続タイムリーを放った浅村を3番、そして、同じく米国戦で3打席で出塁している外崎を5番に置く新オーダーを組む。「左腕のラミレスに対しては右打者」の考えが根底にあったのかもしれないが、その稲葉采配の”ひらめき”がズバリ的中。バラバラだった打線が、やっと数珠つなぎになったのである。 試合前のミーティングで稲葉監督は、「切り替えていこう。国際試合で全勝なんか無理なんだから」と話しかけた。「負けてはならない」ではなく「リラックス」を求めた。 先発の今永は、同じ心境でマウンドに上がった。 「(プレッシャーを)あまり気にしないようにした。特別なことはなにもしていない、ドームと環境にフィットしただけ」 6回をソロアーチ1本の1安打1失点ピッチング。元阪神のナバーロ、元中日、オリックスのクラークらを並べた強力打線を封じ込め、7回は甲斐野、8回は山本、9回は山崎がノーヒットリレー。メキシコのカストロ監督を「今永は大変いいピッチングをした。このような日本のピッチャーと戦うことは簡単じゃない」と仰天させ、この試合、唯一のヒットとなるソロアーチを放ったジョーンズに「今まで見たことがないピッチャー」と言わせた。 国際試合は、やはりロースコアのゲームになるケースが多い。この試合の表の焦点は、打線変更、坂本の復活劇となるのだろうが、勝利を手繰り寄せたのは投手力なのだ。 今永はコンビを組んだ”カープの頭脳”に感謝した。 「會澤さんが初回を見て見極めてくれた。緩い球を使えたし、待っていないところで真っすぐでいけた」 會澤(広島)からは「左バッターに対しては、スライダー、曲がり球系を使うよりも、チェンジアップのほうが、スライダーに見えていいんじゃないか?」とのアドバイスをもらい、チェンジアップで内野ゴロの山を築いた。 「台湾戦よりも真っすぐの質がよくなった」とも言う。 會澤自身は「ここから先まだ試合があるので」とリードの内情の多くを語ろうとしなかったが、7回を抑えた甲斐野も「今日は(調子が)良くなかったんですが、會澤さんには、変化球を多めにうまくリードしてもらった」と、ベテランの技量に最敬礼である。1安打1失点の最強投手リレーの裏には”カープの頭脳”があったのである。 投打が噛み合った「日本らしい我々の勝ち方」(稲葉監督)でメキシコとの大一番に快勝したことで通算成績は3勝1敗となり、メキシコと並び首位に浮上した。15日に韓国がメキシコに勝てば決勝進出が決まり、韓国がメキシコに負けた場合、16日の韓国戦に日本が勝利すれば自力での決勝進出が決定する。もし韓国に敗れても16日の台湾対豪州戦の結果次第では決勝進出の可能性が十分にある。 ヒーローの坂本は「韓国は強いチーム。日本は全員で一丸となって、どんな内容でもいいので勝つことだけを考えて頑張りたい」と決意を語った。そして稲葉監督もポジティブだった。 「このチームで試合ができるのも韓国、決勝と残り2試合。悔いのないように全員で1試合、1試合、結束力を持って戦っていきます」 運命の韓国戦の先発は岸(楽天)が予定されている。