なぜ稲葉監督は不振の坂本を2番で起用し復活ドラマが生まれたのか?「勇人の努力を野球の神様が見ている」
阪神とのクライマックスシリーズのファイナルステージから調子を落とし、台湾でのオープニングラウンドでは、初戦のベネズエラ戦で代打を出された。スーパーラウンド初戦の豪州戦ではスタメン落ち。昨日の米国戦にはスタメン復帰したが、4タコで3三振とからっきしだった。ボールばかり振らされていた。 それでも坂本はプロとしてのフィロソフィーを崩さなかった。 「マイナスのことは考えて打席に立たないようにした。それはずっと変わらないこと」 坂本は表情をほとんど崩すことなくコメントした。 試合前、稲葉監督が動いた。 「アドバイスをしました。」 室内練習場に不振の坂本を呼び技術的なヒントを与えた。 坂本は、「ボールを見逃すときの形」「間のとり方」などを「練習方法のひとつとしてアドバイスをもらった」という。 そのヒントから打撃フォームを国際仕様にマイナーチェンジした。動くボールに対応するために左足を上げる際の動き、ステップを少し変えた。やや重心を最初から右足に置き、ステップ幅を変えて“構え遅れしない”フォームで対応したのだ。 「ステップ幅を意識した。ファウルにならなかった、空振りにならなかったことは、よかった。結果が出たし次につなげたいですね」 坂本にも手ごたえがあった。 信頼を取るのか。現状の調子を優先させるのか。 短期決戦の中で指揮官の「我慢」は、時には命取りになる。 この日、4番の鈴木以外の打順を前日の米国戦から総とっかえして勝負のメキシコ戦に挑んだ稲葉監督は、「2番・坂本」だけは、昨夜の段階で決まっていたという。 「菊池が首の違和感で今日は出られないことがわかっていたため、まずセカンドをトノ(外崎)にしようというところから入った」 二塁が外崎、一塁が山田、DHが浅村、三塁が松田……そして遊撃が坂本。 「守備を埋めてから打順を決めていった」 打率1割台の坂本の2番起用は、稲葉監督の腹の中で固まっていた。 「今季ジャイアンツで2番を打っていたが、このチームでは1試合しか2番は試していない。守備から先に決めたが、2番がいいんじゃないかと」 メキシコの左腕、ラミレスが武器とする大きく動くツーシームに「左打者が対応するのは難しいだろう」という判断に加え、坂本の懸命に努力する姿が、その起用の根拠だった。 信頼か、調子か……稲葉監督の選択は「信頼」だった。 「沖縄合宿から台湾の試合を通じて、ウエイト場でも自分でいろんなトレーニングをしていた。しっかりと調整している姿があった。これは必ず大事なところで生きてくる。努力は野球の神様が絶対に見てくれていると。だから2番として期待した」