3万6千年前・旧石器時代の調理場跡、京都府内初出土 食材を焼き石で加熱/福知山市・稚児野遺跡
京都府福知山市夜久野町井田の稚児野遺跡で、旧石器時代の調理場跡とされる「礫群(れきぐん)」などが出土した。発掘調査をする府埋蔵文化財調査研究センターが1日に発表した。府内では初の発見といい、約3万6千年前(後期旧石器時代前半)の人々の暮らしを知る貴重な成果となった。 2020年に国内最古級、日本に人類が初めて渡来したころの後期旧石器が700点出土している 稚児野遺跡は、国道9号夜久野トンネルそばにある牧川に張り出した標高104メートルの台地上にある遺跡。国道改良工事に伴い、国土交通省福知山河川国道事務所の依頼を受け、埋文センターが調査を行っている。 2020、21、23年度に行った調査で、計1400点以上の石器が出土していて、府内では出土点数が最も多い後期旧石器時代の遺跡と判明している。 石器が集中して出土する範囲は「ブロック」と呼ばれ、稚児野では谷地形を挟んで東西2つのブロック群に分かれている。今年度の調査では、20年度の調査で発掘した東ブロック群の続きが見つかった。
また、木の葉などで包んだ食材の周りに焼けた石を置いて加熱調理をする調理場と考えられている「礫群」も新たに発見され、府内では初確認となった。見つかった礫群の位置はブロック群から5メートルほど離れた場所にあり、埋文センター調査課の中川和哉課長補佐(63)は「当時の人たちは調理や石器製作など、作業内容によって場所を分けていたのではないかと考えられる」と話す。 今年度の調査で出土した石器は約250点。後期旧石器時代前半に特徴的な「ナイフ形石器」「刃部磨製石斧」などが礫群のそばで見つかっており、いずれも約3万6千年前のものとされる。石材には地元で入手可能なシルト岩のほか、奈良県と大阪府の境にある二上山周辺で採れるサヌカイトも使われていて、当時の石器人が広範囲に移動していたことが推測できるという。 中川課長補佐は「旧石器時代の遺跡が少ない近畿北部地域において、今回の発掘成果は当時の暮らしを知る上で貴重な成果であると思います」と話していた。 3日午前11時から現地説明会がある。申し込み不要で誰でも参加できる。 現場周辺に駐車場はないため、近くの夜久野町教育文化会館の駐車場を利用する。駐車場から遺跡までは徒歩15分ほど。
■6日から市立図書館で出土品を展示
これまでに行われた発掘調査で出土した旧石器時代の石器など約30点を市教委が展示する「ロビーで文化財 夜久野町稚児野 旧石器遺跡の発掘展」が、6日から駅前町の市立図書館中央館2階サービスカウンター前である。18日まで。