一般人がスマホで撮った映像を使い…経費削減の嵐のテレビ局が生み出した「カメラなし番組」の衝撃!
10月12日に放送された『クロミのヒロミ』(フジテレビ系)の試みが、業界の話題をさらっている。 エンタメ界の「基礎」を築いたヒロミの壮絶バラエティ力 「ヒロミ(59)と三宅健(45)、ベッキー(40)が熱海で街ロケをしたのですが、同行するのは音声スタッフのみ。カメラクルーが不在なのです。街で出会った人たちにスマホで撮影してもらうまでクロミ(画面が真っ暗)状態という、経費削減を逆手に取った斬新な内容でした」(制作会社ディレクター) テレビ不況を受けて、民放各局が制作費を大幅に削減していることは本連載でも既報の通り。たとえば日本テレビは、’21年の決算書によればコロナ前から100億円以上も制作費が減額されていた。 「日テレ以外の民放も、コロナ前から2~3割ほど制作費を減らしていますね。それにともない、番組にキャスティングされるタレントの数も1~2人減らされています。ゴールデン帯(最も視聴率が取れるとされる夜7時~夜10時)の番組なのに担当の放送作家は一人しかいない、ということも珍しくなくなりました。経費削減を逆手に取った企画は各局で検討されていますけど、カメラクルーなしで番組を作るという『クロミのヒロミ』のやり方に唸ったテレビマンは多い」(放送作家) スマホのカメラ性能の向上により、テレビ放送に堪えられる画質になったことも大きいが、「″1億総カメラマン時代″も逆手に取っている」とキー局プロデューサーは絶賛する。 「街ロケはセットを組まなくていいから、それだけで予算を削減できる。一方で、『ロケ中のタレントさんを撮らないで』とお願いしても、無断で撮影する野次馬は後を絶たない。ならば野次馬を巻き込んで、カメラマン役をお願いしてしまえ、という一石二鳥の発想です。真似する番組が出てくるかもしれませんね」 他の番組で使用しなかった素材を使ってクイズを作る『ヨソの番組乗っかりクイズ 寄生番組パラサイト』(テレビ東京)など、これまでなら世に出なかったボツ素材を利用した″SDGs″番組も増加している。 ◆需要UP中のタレントとは? 「特に深夜帯の番組やパイロット版の番組は低予算での制作を求められる代わりに、実験的な企画が通りやすくなった。″報酬は安くてもやりがいがある″と喜んでいる若いスタッフや放送作家は少なくないですよ」(前出・放送作家) トークだけで番組を成立させられるタレントの需要も高まっているという。 「昨年始まった『伊集院光&佐久間宣行の勝手にテレ東批評』は、テレ東社内にあるナレーションブースで、二人がラジオ感覚でテレ東をネタにトークするというシンプルなもの。制作費は激安ですが、そのぶん、出演者にトーク力が求められる。番組に華を添えるだけの女性タレント等には厳しい時代になりました」(前出・制作会社ディレクター) 裏方のスタッフにも、経費削減の波は押し寄せている。 「生成AIを使う番組が増えているんです。イメージ画像ぐらいなら、AIで簡単に作れるので、イラストレーターやCGクリエイターへの発注が減っている」(前出・キー局プロデューサー) 「余人をもって代えがたい」才能のみが、令和のテレビを担うことになりそうだ。 『FRIDAY』2024年11月22・29日合併号より
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