センバツ2023 彦根総合、念願の舞台へ 監督と二人三脚で尽力 松本理事長、選手ら後押し /滋賀
センバツに出場する彦根総合の野球部専用グラウンド(米原市)にはほぼ毎日、同校理事長の松本隆さん(78)の姿がある。「野球部を強くしたい」と3年前に招へいした宮崎裕也監督(61)と二人三脚で、甲子園を夢見る選手たちを物心両面で後押しする。その思いの土台には、ねじ工場の経営者として産業界を長く生きた経験がある。【飯塚りりん】 松本さんは子供のころから家業のねじ製造会社を手伝い、大阪や京都の製造業者での修業も経験。父から会社経営を受け継ぎ、月産2800トンのねじ製造会社に育てた。 父は会社経営から退いた後、彦根総合の前身となる学校の再建に尽力した。2003年、松本さんが父の後を継いで理事長に就任。男女共学化や総合学科の開設など学校を充実させてきた。 学校経営のうえで大きな目標とするのが「不登校など困難を抱えた生徒も受け入れ、全員を卒業させる」ことだ。松本さんは中学3年の時に実家と会社の工場が全焼し、経営立て直しのために高校進学を諦めた。その後、経済人として学歴面で苦労した経験から、不登校の生徒だけでなく他校からの転校生も積極的に受け入れる。野球部にも他校の野球部の練習についていけないなどさまざまな事情を抱えた転校生や編入生がおり、元気に野球に打ち込んでいる。 松本さんは宮崎監督と相談し、ここ2年間で寮2棟と専用グラウンドを建設した。昨年12月23日。そのグラウンドで練習中の選手たちが突然、松本さんを囲んで「ハッピーバースデー」を歌った。もうすぐ誕生日を迎える松本さんへのサプライズだった。オリジナルのキーホルダーをプレゼントしてもらった松本さんは「うれしいね」と相好を崩した。 「僕が半生をかけたねじ製造は『1本1円何十銭』という世界。小さく、細かく、コツコツとやってきた。野球部を強化する道もそれと同じやと思う。人生最後の仕事としてこの学校、この野球部を立派にして彦根の街に貢献したい」 宮崎監督とともに掲げる目標は「高校野球の名門校になること」。その長い道のりへの一歩を踏み出すチームの雄姿を甲子園のアルプススタンドから見届ける。