LDHで凄まじい存在感を放つ38歳。平成を生きてきた人ならわかる佇まいの”懐かしさとカッコよさ”
出身地川崎へ楽曲を贈呈
今市にとっての京都とは出生の地なのだが、生まれ育ったのは神奈川県の川崎である。ちょうどホットなトピックとしては、市政100周年の川崎市が催した『KAWASAKI・SENZOKU 100th FESTIVAL』に最新ナンバー「REALLY LOVE」を贈呈した。同曲は最新アルバム『R』の3rdトラックとして配され、リード曲「RED」では「誇り」という一語にこだわり、川崎にゆかりある筆者もまた誇りに思ったりする。 「REALLY LOVE」から「RIDE」までの曲順では、昼夜両用の集大成的なメロウネスを実現。古くはアイズレー・ブラザーズ的な色男の系譜に連なる今市隆二R&B世界の外連味をリレー方式で連ねてみせるなんてね。人も音楽もすべてがカッコよさによるカッコよさのためにある人なんだなぁ。 歌詞冒頭は「フロントロウでランウェイ 酔いしれるパリ」、続いて「ブライアンにコール」と交流のあるR&Bレジェンド、ブライアン・マックナイトの名前が歌われ、もうこの人のカッコよさは無尽蔵。ミュージックビデオを見ると、艶やかな黒の衣装を纏って、両腕がニョキッとどころの騒ぎじゃない(「#夏男」の白甚平からは両脚がニョキッ!)。
なぜだか理由を考える前から人を感動させる才能
あぁ、そうだ、「フロントロウ」といえば、2023年の新年にフェンディのショールームで開催されたミラノコレクションに今市が出席したときだった。黒のショートパンツの裾からニョキッと伸びる両脚の美麗っぷりが、当時のTwitter上ですごく話題になっていたっけ。袖だけじゃなく裾も美しさの接点にしてしまう。それが今市隆二という人だ。 今市隆二とは、なぜだか理由を考える前から人を感動させてしまう才能の持ち主でもある。それが「変わりゆく変わらないもの」としてのカッコよさそのものに起因するのは言うまでもないが、より具体的なイメージを記憶から探るなら、根っからの歌い手である今市にとっては唯一の主演映画『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』(2019年)の一篇、『On The Way』での一コマ。 同作中盤、メキシコに半ば嫌々で移民の支援にきた健太(今市隆二)が走行中の車内の助手席に座っている。ここではシートベルトを肩から腰へかけている。 このシートベルトを閉める以前以後で、健太の嫌々が自発的な気持ちに変化する過程が描かれる。シートベルトで安定した上体をちょっとそらせて、目尻に時折かかる髪を上に結び、車窓風景とコミットする今市がすごくいい。これだけで人を感動させる。その才能の証明になるような一コマだった。