【国民の疑問】石破首相はトランプとまともに付き合えるの?昭恵夫人に孫正義氏…利益もたらす者を厚遇、見えてきたトランプ外交の理念
突如、日本関係の動きが相次ぐ
トランプ氏は当選直後、各国首脳と電話で話し合ったが、石破首相とは当選2日後、わずか5分間だった。フランスのマクロン大統領とは25分、韓国の尹錫悦大統領とは12分間に比べると短さは際立っている。 時間の長さは問題ではないとしても、石破首相がその直後、ペルーで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席の途中、米国での会談を打診したものの実現を見なかったこともあって、日本側には、トランプ氏の対日姿勢をめぐる疑念が台頭していた。 12月中旬以降になって、昭恵夫人、孫氏との会談に加え、日米首脳会談への意欲表明、ジョージ・グラス氏の駐日大使指名などが一気に重なり、あたかも〝日本週間〟といった趣をみせた。 トランプ氏の姿勢が変化したのか、就任が近づくにつれて、対日関係の日本の重要性を再認識したのかなどそのあたりの事情は推測するしかないが、日本側に対するシグナルではなかったか。 トランプ氏は孫氏とともにした記者会見で、石破首相との会談の可能性を聞かれ、「ぜひ会いたい。日本側が望むなら(就任前に)会いたい」と述べた。 日米関係の重要さも強調したが、わざわざ「日本側が望むなら」と付け加えたことで、あくまでも日本側の求めに応じてやるという響きが生じたのは否定できなかった。
トランプ氏の発言について、林芳正官房長官は、「双方の都合のいい時期に会談し、じっくりと意見交換、人間関係を構築することができればいいと考えている」(12月17日の記者会見)と述べるにとどめ、詳細に踏み込むのは避けた。
米軍経費、通商問題で強硬姿勢か
トランプ氏は、16年の選挙運動中、在日米軍経費の日本側負担について、「なぜ100%ではないのか」と強い不満を示していた。安倍氏との強固な信頼関係が功を奏して、任期中、過大な要求をしてくることはなかったが、今回の選挙中も、側近の中には、同盟国に対する米軍経費負担増について、日本も例外ではないと強調する向きもある。 岸田文雄政権での防衛費の国内総生産(GDP)比2%引き上げを歓迎しながらも、第一次トランプ政権で、国防次官補代理のポストにあり今回、国防次官に指名されたエルブリッジ・コルビー氏のように、「3%」を求める声も散見されはじめている。在日米軍経費(思いやり予算)の日本側負担は現在、2100億円程度で推移しているが、26年には改定が想定されている。 経済についても新政権の厳しい姿勢が予想される。トランプ一期目でホワイトハウスの通商会議委員長だったピーター・ナバロ氏は、中国からの輸入品に大幅な関税を課す一方、「日本も例外ではない。日本には非関税障壁がある。日本では、アメリカの自動車はほとんどみられない」(24年10月、NHKのインタビュー)と述べ、強い方針で臨むことを示唆している。 石破首相とトランプ大統領の就任前の会談が実現したとしても、先方から、これらの問題が持ちだされた場合、日本側に算段があるのだろうか。初会談が実現したとしても石破首相は喜んでばかりはいられないだろう。
樫山幸夫