82歳男性・不動産オーナー「自分の高収益マンションを子ども3人に〈平等に相続〉させたいが、共有名義化は防ぎたい」【行政書士が回答】
妻の死をきっかけに、終活を考え始めた不動産オーナーAさん(82歳・仮名)。自分が存命の間は家賃収入を自身の生活費に充て、自分亡きあとは、その収益物件を子ども3人へ平等に相続させたい。ただ、平等に相続させるといっても不動産の共有化は防ぎたい…。そんなAさんの希望を叶えるには、どのような対策が必要になるのでしょうか? 行政書士・平田康人氏が回答します。
82歳・不動産オーナーの「終活」
--------------------------------------------------- 【相談】 4年前に妻が亡くなり、自分自身の終活を考えるようになったAさん(82歳・仮名)。Aさんには子どもが3人(長男、二男、長女)います。 Aさんは賃貸マンション1棟を保有するほか、自宅(戸建て:築40年以上)や金融資産があり、これらの資産については、税理士のアドバイスもあり遺言作成を検討しています。 賃貸マンションは収益性も立地も良いため、Aさんが存命中は生活のために自身が賃料を取得し、Aさんの死後は子ども3人へ平等に遺したいと考えています。ただ、相続で共有不動産になってしまうと、管理処分を巡って子どもたちが揉める可能性も否めません。 また、Aさんは妻を介護した経験から、「子どもに負担をかけることがないようにしたい」と自身の認知症対策も気になっています。 Aさんの希望を実現するために、どのような生前対策が必要でしょうか? --------------------------------------------------- 《回答》 任意後見と併用して、賃貸マンションを信託財産とする民事信託(以下「家族信託」)を組成し、財産的価値(信託受益権)と管理処分権限を分離します。
家族信託とは?
家族信託とは、本人(委託者)の判断能力が低下する前に、財産の管理処分を信頼できる家族(受託者)に託すと同時に、財産的価値を享受する者(受益者)も指定する仕組みです。 家族信託は財産管理のみが目的であるため、使い方として、身上監護の面を補完するために任意後見契約と併用したり、また、すべての財産を信託する必要はないため、遺言と併用したりします。そして、信託契約の信託財産目録に記載した財産を対象として、本人(委託者)から家族(受託者)に管理処分権限が移転するため、本人が認知症になっても受託者である家族が管理処分することで資産凍結を回避できます。 また、信託契約締結後も信託財産の実質的な所有者は本人なので、本人を「委託者=受益者」と設定し、本人の生存中は信託財産の財産的価値を自身が享受しつつ、第2受益者として子どもら家族を指定しておくことで、本人の死亡後は、信託受益権が第2受益者に承継されることになります。
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