【富山マラソン】被災したランナーの思い
富山テレビ放送
富山マラソンまであと5日となりました。 今年も1万人以上のランナーがそれぞれの思いを胸に富山路を駆け抜けます。 その中に、被災地・石川県珠洲市に心を寄せながら初めてフルマラソンに挑戦する高岡市の男性がいます。 思いを取材しました。 高岡市に住む大野尚志さん(43)。 長年中学校の教員を勤め、この春からは県教育委員会で生涯学習を支援する業務に携わっています。 小学生から陸上を始め、短距離を得意としていますが、フルマラソンは初めてです。 *大野尚志さん 「少しずつ自信がついてきた。仕上がりは順調。目標タイムは5時間です。」 7月から本格的に練習を始めたという大野さん。 大野さんがフルマラソンに挑戦するのには理由がありました。 元日の能登半島地震。 大野さんは珠洲市の妻の実家で家族とくつろいでいた最中に強い揺れに襲われました。 一瞬で家の中はめちゃくちゃに。 その後も揺れに怯えながら、車の中で不安な一夜を過ごしたと言います。 *大野尚志さん 「幸いにも(家族は)誰一人けがはなかったが、家の中は入れる状況ではなかったし、今まで私が大好きだった景色、珠洲の町、人々の暮らしが完全に変わってしまったと、改めて私自身も悲しく思った。」 大野さんは妻と3人の子供との5人家族。この日は珠洲市の妻の両親が遊びに来ていました。 9月の豪雨でも被害が出た珠洲市。 2度の災害で心が折れそうになったという妻の両親も自宅が公費解体されたことで、新たな一歩を歩み始めていました。 *義父 中川政幸さん 「さすがにじいちゃんもショックだった。(自宅を)潰すのは分かっていたけど、重機が入ると悲しくなってね。この土台も全部取って、きれいになっちゃって、ここに何か建てようかと思っているんだけど」 大野さんとって珠洲市は特別な場所。 お盆と正月は妻の実家で過ごすのが恒例で、マラソンの楽しさを知ったのも珠洲でした。 海沿いの10キロをよく走ったと言います。 *大野尚志さん 「結婚して何年か(珠洲に)通ううちに美しく温かい風景の中で自然と走りたくなった。珠洲の風景を堪能しながら自分のペースで走ることを何年も続けてきた。(地震を体験し)日常のありがたさも感じたし、能登で何年も走らせてもらって、いつかは富山マラソンに挑戦したいという気持ちもあり、挑戦を決意した」 練習は週2回。 大野さんが顧問を務めていた中学校の陸上部のコーチに時々協力してもらって、長距離の走り方のアドバイスを受けています。 *大野尚志さん 「これ弾みすぎ?」 *原井拓実さん 「それくらいの感覚でいいので上半身もっとリラックス」 マラソンを好きになった珠洲の街並みを心に浮かべながら、ずっと心に抱いていた富山マラソンを完走したいという大野さん。 走る姿を見せることで、妻の両親を励ましたいと考えています。 *大野尚志さん 「しっかり走り切りたいのと珠洲のお義父さんお義母さんに頑張っている姿で笑顔を届けたい。私が復興に向けて協力できることは限られているが、復興を応援しながら また珠洲の復興した街にで走ることができたら」 富山マラソンには妻と子供たち、そして珠洲の両親が応援に駆け付けます。 *妻 里美さん 「私よりも珠洲が好ではないかなというくらい本当に珠洲のことが好きで。それはうれしくて。とにかく楽しんで走ってほしい」 *大野尚志さん 「頑張ります。絶対完走します。」 大野さん、これまで大会の審判を務めていて今年は思い切って出場することにしたそうです。 目標の5時間以内の完走、応援しています。 あす30日はペースランナーを務める氷見の男性を紹介します。
富山テレビ放送