第94回選抜高校野球 東洋大姫路、花開け! 野球部ファン、くす玉自作 /兵庫
<センバツ2022> ◇50年応援の金さん 春の温かい贈り物 センバツ出場を決めた東洋大姫路の野球部グラウンド(姫路市打越)が28日、吉報とともに大型のくす玉で華やいだ。同校野球部ファンの一人が甲子園出場を悲願し、自作したものだ。3月末で退職する藤田明彦監督(64)と三牧一雅野球部長(65)がひもを引くと、2人へのはなむけ「ありがとう」のメッセージとともに垂れ幕が伸びた。【阿部浩之】 「ファン代表」として自作したのは、同市上手野の建設業、金徳諸(キムドクジェ)さん(71)。「代表」の名にふさわしく、20歳の頃から東洋大姫路の野球に目を注いできた。1点差でせめぎ合い、足を使い、時にはホームスチールをしかけて守り抜く野球を展開し、1977年夏に全国制覇を遂げた梅谷馨監督(故人)の野球と人間性にとりつかれた。この伝統を継ぎ、多彩な魅力のある同校の野球から離れられなくなった。 くす玉を作ったのは4度目。準々決勝で敗れた2021年秋の近畿地区大会が終わって間もない11月上旬、「甲子園に行くんだ。行かなきゃ」と、くす玉作りに着手した。三牧部長は「いや~、ちょっとまだ~」と早すぎる動きに戸惑ったが、金さんは「いや、決まりや」と押し返した。 「何でも、こうと思ったらやる性格」と自己分析する金さん。幼いながらに「全国、そしてオリンピックを目指す」と言った長女の言葉を逃さず、小学2年の誕生日に自宅倉庫を改装した道場をプレゼント。柔道経験がある金さんは組み合って技を教えた。その長女・金知秀(チス)さん(21)=山梨学院大3年=は、21年の東京五輪で柔道女子57キロ級の韓国代表で戦うトップ選手になった。 自作したくす玉は直径1メートル。仕事で培った技術を生かし、厚さ6ミリの鉄筋を半円形に曲げて金網を張り、中にシートや紙を張った。垂れ幕(縦4・8メートル、幅85センチ)の字は下書きを経て完成させた。 選抜出場校発表の1週間前、高さ約12メートルのバックネットによじ登り、くす玉をつるすロープを事前に設置した。何度もくす玉を開くテストを重ねたが、ちゃんと開くか心配で、発表当日は午前2時に目が覚めた。 司会者の号令とともに藤田監督、三牧部長の手でくす玉が開かれる光景を見て、「この時がきたんだ」と甲子園に行ける感慨に浸った。 〔神戸版〕