常石グループ、23年商船受注62隻。手持ち「27年末まで」めど
常石造船などで構成する常石グループの2023年商船受注隻数が62隻に達した。22年の35隻から大幅に隻数を伸ばした。同社開発のヒット商品となる8万2000重量トン型(82型)カムサマックスバルカーを軸に成約を積み上げた。カムサでは、従来の重油焚(だ)きのほか、メタノール燃料型も20隻成約。メタノール燃料船としては、カムサのほか66型バルカー、さらにコンテナ船でも同社建造船として最大船型となる5900TEU型を開発し、3船型で計約30隻を受注した。昨年1年の成約拡大を受け、足元では27年末までの手持ち工事確保にほぼめどを付けた。 関係者が23年受注実績を明らかにした。受注隻数には、常石造船のほか、中国の常石集団〈舟山〉造船(TZS)、フィリピンのツネイシ・ヘビー・インダストリーズ〈セブ〉(THI)分も入る。関係者は「23年の受注隻数目標は40隻としていたが、実績は大幅にこれを上回った。62隻のほか、24隻分を受注内定した」と語る。 常石造船は昨年、メタノール燃料船の成約で存在感を示した。23年1月に世界初のメタノール燃料バルカーとして、米穀物メジャーのカーギルを用船先とするカムサ2隻を三井物産から受注することで基本合意したと発表。それ以降成約を積み重ね、メタノール燃料船としてカムサ20隻のほか、66型バルカー3隻、5900TEU型コンテナ船4隻の計27隻を受注した。 船舶の新・代替燃料化に関連する動きとして、今年1月に5000立方メートル型LPG(液化石油ガス)船の第1船を引き渡した。常石造船としてLPG船の建造は初めてで、LPG貨物タンクも自社で製造した。曲げ加工、溶接などを含むこのノウハウをLNG(液化天然ガス)、アンモニアなどの燃料タンク製造に生かす。 常石造船は、内航船分野でも新・代替燃料化に対する取り組みを進める。 現在、NSユナイテッド内航海運向けにLNG専焼エンジンとリチウムイオンバッテリーを組み合わせたハイブリッド推進システム適用の5560重量トン型石灰石船を建造中で、3月に引き渡す予定。 このほか、常石グループの神原汽船、ツネイシクラフト&ファシリティーズの2社が、ベルギー海運大手CMBと共同で出資するジャパンハイドロが計画している「水素混焼エンジン搭載型タグボート」も常石造船が建造する。今年に建造を開始し、来年に引き渡す。 常石造船は、船舶の新・代替燃料について、候補となる対象全てに対応する方針。「全方位でやっている。バイオ燃料や原子力推進なども勉強する予定。『これが来そうだ(需要が増えそうだ)』となったとき、すぐに動けるようにしたい」(関係者)
日本海事新聞社