ついに始まった定額減税、「いつ」「どのように」恩恵あり?
岸田内閣の支持率が10%台になり、発足後最低の水準になったという報道がありました。支持率低迷中に実施されることになったのが、2024(令和6)年度の税制改正によって実施が決まっている「定額減税」です。物価の上昇に賃金の上昇が追いついていないことから、国民の負担を和らげる一時的な措置という位置づけです。 国民の多くが望む「減税」を実施したにもかかわらず不評の定額減税ですが、どのような制度で、いくら得するかについて考えていきましょう。 減税額は1人あたり総額4万円で、所得税と住民税が減税されます。1人4万円のため、家族の人数×4万円が減税となり、手取りが増加する仕組みです。働き方や年齢にかかわらず、一部の高所得者を除けばほとんどの人が減税の恩恵がある制度設計になっています。 ■定額減税の恩恵はいつ、どうやって受けられる? ■ 定額減税の金額 本人・・・所得税3万円、住民税1万円扶養家族・・・1人につき所得税3万円、住民税1万円大家族ほど減税額が大きくなる仕組みです。 ■ 定額減税の対象者 以下の3点をすべて満たす必要があります。 居住者(日本国内に住所を有する人、または現在まで1年以上居所を有する人)2024年分の所得税納税者2024年の給与収入(年収)が2000万円以下の人減税実施の方法は、以下のとおりです。 ■ 給与所得者の場合 会社員や公務員など、収入を給与という形で勤務先から受け取っている人のことです。給与が支払われる際、所得税が源泉徴収されます。源泉徴収される所得税から定額減税額が控除されることで「源泉徴収額を減らすことによる減税」が行われます。源泉徴収額が減ることで手取りを増やす方式です。 ただ、年収が2000万円を超え適用対象外となった場合や、年の途中で退職したり、給与の支払いがなくなったりして、給与水準から定額減税分が控除しきれない場合は、所得税の納付や還付の手続きが必要になります。 なお、給与明細に定額減税の金額が記載されますので、6月に支払われる給与の明細を確認するといいでしょう。 ■ 年金受給者の場合 公的年金から源泉徴収される所得税額から、定額減税分を控除します。給与収入と年金収入の両方がある場合は、所得税の確定申告で定額減税額の精算を行います。 ■ 個人事業者の場合 2025(令和7)年に実施する、2024(令和6)年分の所得税の確定申告の際に、定額減税の額を納付税額から控除します。会社員、公務員、年金受給者と比べると、減税の時期が遅くなり、翌年になります。 前年の確定申告により一定額以上の納税となった場合、予定納税といって確定申告の前に複数回の納付期限を設けて、所得税を仮払いする制度があります。予定納税に該当する人は、予定納税額から定額減税分の控除が実施されます。 ■今年の6月は住民税が徴収されない なお、所得税と住民税では控除の考え方が異なります。住民税では今年6月分の住民税徴収をせずに定額減税の実施該当月として、残りの11カ月で残った住民税を均等に割って納付します。 住民税については、すでに勤務先から住民税の課税決定通知書が渡されているはずです。確認してみるといいでしょう。 ■ 所得税の定額減税実施の考え方 ■ 住民税の定額減税実施の考え方 所得税が3万円に満たない場合、住民税が1万円に満たない場合など、納税額より定額減税額が多い場合、定額減税では控除できない場合があります。その場合は、給付金として給付されることになります。 詳しくはお住まいの自治体の定額減税に関するサイトを確認してください。 ■ステルス的に手取りが増え、消費に回りやすいか 定額減税の控除対象とならない住民税非課税世帯と低所得世帯へは、定額減税とは別に、給付金の支給が開始されています。2024年2月から市町村ごとに給付が行われているようです。 対象者だと思われるにもかかわらず、給付金を受け取っていない人は、お住まいの市町村に問い合わせてみるといいでしょう。 以前の定額給付金と比べて、所得税の天引き額を減らし、住民税の課税額を減らす形で導入された今回の定額減税。定額給付金は貯蓄に回る金額が多く、効果が疑問視されましたが、今回は物価上昇局面であり、かつステルス的に手取りを増やす仕組みのため、減税額における消費に回る割合は多くなるかもしれません。個人的な興味として、定額給付と定額減税のどちらが経済効果が高いのかが気になります。 皆さんは、今回の減税分を何に使いますか? 定額減税が実施される方向となった昨年11月にも 本連載 で取り上げましたが、貯蓄に回したり、消費してしまったりするのではなく、長期的にプラスになるような金融資産への投資や自己投資に充ててはいかがでしょうか。 高橋 成壽(たかはし・なるひさ)/1978年神奈川県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、2001年にFP資格を取得。投資や保険などのキャリアを経て、2007年にFPとして独立。自身の投資経験と世界の金融ネットワークを活用し、シングルマザーから上場企業の経営者まで、1人ひとりに合わせたお金のアドバイスを提供している。有料のFP相談「 寿FPコンサルティング 」、無料のマネー相談専門家マッチング「 ライフデザインセンター 」を運営。2020年より東海大学非常勤講師として学生向け金銭教育に従事。著書に『ダンナの遺産を子どもに相続させないで』(廣済堂出版)がある。 ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
高橋 成壽