『VCT Pacific』を戦うDFMに聞く、“初勝利”の裏側ーー「勝ったとき感動してくれたファンがいたことが嬉しかった」
韓国・ソウルにて開催中の『VALORANT』のアジアリーグ『VCT Pacific 2024』。日本からは、昨年に引き続きZETA DIVISION(以下、ZETA)とDetonatioN FocusMe(以下、DFM)の2チームが参戦中だ。 【画像】ファンからの応援旗を手にリラックスした様子のDFM VALORANTメンバーたち 筆者は昨年と同じく、今年も現地取材に赴いた。今シーズンから試合会場での1on1インタビューは初週と最終週以外はなくなってしまったが、チームにご協力をいただき、DFMの韓国ゲーミングハウスにお邪魔してきた。しかもチームのご好意で、スターター5名の選手にインタビューに応じていただけることに。韓国でのスペシャルインタビューを早速お届けしていきたい。 ■不調のT1をDFMのパフォーマンスが上回った シーズン開幕以来の初勝利を果たす ――さっそくですが、先日のT1戦についてぜひ伺いたいです。シーズン開幕以来、実に682日ぶりの勝利だったとのことですが、特にAnthem選手は昨年のことを思い出したのでは? あらためて、長いトンネルを抜け出した感想を聞かせてください。 Anthem:勝ったときは「やっと勝ったな」というのが最初の感想でした。今年韓国にもどってきたときは懐かしい風景を見て「誰々とここ行ったなぁ」とか、昨年を思い出していたんですけど、勝ったときはとにかくうれしい気持ちのほうが大きかったですね。1勝で満足せず2勝目3勝目と、今後も勝利を挙げられるようにしたいと思っています。 ――新たにDFMに合流した選手たちも「Kickoff」で勝つことができず、ようやく「Stage1」で勝利できましたが、DFMにとってこの勝利はどんな意味を持つと思いますか。 neth:あとから合流した僕たちは国内で優勝してここに来たわけではなく、国内3~4位のチームの選手だったので、国内で優勝できていないのにティア1のリーグで勝つのはやっぱり難しいのかなって思ってたんです。 だけど、各メンバーのシナジーやコーチ陣の支え、裏方のサポートのおかげでまずは1勝できました。自信にもつながったし、これから対戦するときも「絶対に勝てない相手」というのはいないんだ、という確信も持てました。まずはひと安心できましたね。 ――DFMにとって、大きな一歩となる勝利だったと。逆に、違う感想を持った方もいたりしますか。 Medusa:個人的には「『Kickoff』で負けたのは、ほかのチームより練習量が足りなかったからだ」という思いがありましたね。なので、「Kickoff」で負けたからって「Stage1」では絶対に勝たなきゃ、みたいなプレッシャーはありませんでした。練習量を増やせば、普通にいける(勝てる)んじゃないかって思ってて。実際、その通りに1勝できたので、いい感じだと思ってます。Gen.Gには負けてしまいましたけど。 ――そのGen.G戦も試合内容は悪くなかったように思いますし、何よりT1に勝ちましたからね。選手の立場では、今のチームの仕上がりについてどう感じていますか。 Meiy:今はまだ30%ぐらいですかね。 ――残りの70%は? SseeS:時間です。「精神と時の部屋」(※『ドラゴンボール』に登場する現実世界の1日で1年分の時が流れる修行部屋)があれば100%になります(笑)。 ――本番では緊張せず自分の実力を発揮できているという感覚ですか。 Meiy:緊張はしてないですね。なんなら、俺はオフラインのほうが強いです。 Anthem:本当にみんな本番の方が強くて、練習の感じからしたら、初勝利はもうちょっと先になるかなと思ってました。正直、T1戦も勝てるとは思ってなかったぐらいで。けれど、T1が不調だったところを俺たちのベストパフォーマンスが上回った感じだったと思います。 Gen.G戦もみんなパフォーマンスは良かったんですけど、やっぱり時間の面ーー練習期間の長さの違いが顕著に出たっていう感じでした。 ――DFMは「Stage1」でロールチェンジをしていますよね。チームとして試行錯誤しているように見えましたが、現在の形が答えでありベストであるということでしょうか。 neth:みんなが話しているとおり、僕たちはロースターを結成してまだ時間がそんなに経ってないので、ほかのチームに比べて練習量が足りなくて。みんながやりやすいロールっていうのも絞りきれてないんです。とりあえず「Stage1」は今のロールでやっていこうという形ですが、感触としては悪くはないですね。ただ、もっとほかにもあるかもしれないって感じで模索してます。 ――そういえば、チーム内で大喧嘩になったというエピソードを披露していましたが、それについて良ければ詳しく聞かせていただけないでしょうか。 neth:内容自体は、そんなにめちゃくちゃ大きい問題があったとかではないんです。これはコーチ陣やメンバー全員に言えることなんですけど、みんな思っていることが言えずに言いたいことをため込んでしまっていて。それが試合前日に出てしまって、当事者同士でその話し合いを終えるために、その日の後半の練習を取りやめたという流れでした。小さい問題が積もり積もってお互い爆発して、Melofoviaコーチが泣いたっていう感じですね。 ――ということは、Melofoviaコーチが当事者なんですか? neth:いや、当事者じゃないのに泣いちゃったっていう話です。 ――なるほど、Melofoviaコーチは熱い男ですからね……! でも、みんなが真剣にやっているからこそ必要な衝突だったということですよね、きっと。 Meiy:それはそうですね。日本人の性格上なのか、結構みんな我慢しちゃうところがあるんで、そこは韓国人とぶつかっちゃったかなっていう感じです。 ――あれ? せっかく伏せていたのに当事者がわかっちゃいましたね(笑)。 一同:(爆笑) ■「雨降って地固まる」を経て 新生DFMの選手とコーチ陣の雰囲気は? ――ここからは新生DFMのみなさんがどんな雰囲気なのかひとりひとりご紹介いただきたいんですが、どなたに話してもらうのが良さそうですか? neth:みんなの間を取り持つタイプなのはSSeeSさんですね。一番みんなのことをよく知ってると思います。 SSeeS:そんなことないだろ(笑)。でもまあ……じゃあAnthemから。一見静かな感じなんですけど、急に楽しくなるときもあればゲームのときは真剣で、メリハリのある人ですね。 Meiyは一緒にいると楽しいし、明るくなれる存在って感じです。もちろん、ゲームも強いし。ちょっとマイペースなところもあるんですが、そこが人間味があっていい感じだと思います。 Medusa:みんな楽しいじゃん。 SSeeS:Medusaが一番大変で、こんな感じで俺のことをいつもいじってきて(笑)。だけど性格は優しくて、ご飯とか「これ食べる?」って聞いてくれたり色んなところに連れて行ってくれたりしてます。まあ、自分の食べたいものを言ってるだけだとは思うんですけど(苦笑)。ゲームしてても思ったことがあればすぐ言うし、結構男らしい性格ですね。 Medusa:それ、褒めてる(笑)? SSeeS:褒めてるよ。 ――やっぱりチームで唯一の韓国人選手だから、ホームということで美味しいものとかを教えてあげてるんですか。 Medusa:いや、そういうのは面倒くさくて苦手なんですけど、自分が食べるものを「一緒に食べるなら来れば?」ぐらいの感じかな。あ、でも「糖葫蘆(タンフールー:韓国で流行している中国発祥の伝統的なスイーツで、串刺しにした果物に飴をかけて固めたもの)」は結構食わせてますね。 ――なんだか、可愛いエピソードですね(笑)。neth選手についてはいかがでしょう。 SSeSS:俺と同級生のnethさんは、物静かな感じで優しい人ですね。 Medusa:みんな優しいじゃん。 SSeeS:nethさんは不思議な感じで、でも喋ってみると面白い人です。練習室の隣に俺の部屋があるんですけど、なんか知らないけどいつも俺の部屋にいるんですよね。 neth:居心地が良くて。 ――今度はSseeS選手について、どなたか話してくれませんか。 neth:SSeeSさんは……普段ここでは言えないようなことしか言ってない人です。 SSeeS:いやいや、やばいでしょ(笑)。どういうこと? neth:というのは冗談で(笑)。年齢は俺と一緒なんですけど、俺と違ってみんなにナメられてて、それが逆にいい雰囲気をチームにもらたしてくれていますね。 ――面倒見の良い年上だけどいじられ役、みたいな感じなんですね。コーチ陣についても、どなたかご紹介をお願いします。 Anthem:NorthernLightsコーチは、たぶん一番『VALORANT』に厳しいんじゃないですかね。表では見せないけど、陰でめちゃ頑張ってくれています。最近は結構まとめ役のような感じにもなっていますね。 Melofoviaコーチは個人指導が多いです。個人視点を見てフィードバックをしてくれたり、反省会のときに円滑に進むよう間を取り持ってくれたりしています。 neth:僕はAstellコーチに個人フィードバックを結構もらってますね。もちろんほかのコーチにもフィードバックをしてもらってはいますが、コーチが3人いる分、ひとりひとりに手厚く目を向けて見てくれているという感じです。 ■「Stage2」にも備えながら、1勝に甘んじず勝ちを目指す選手たち ――では、日本人選手のみなさんの韓国生活についてお伺いしたいです。食事や環境などが日本と違って大変かとは思いますが、みなさんもう慣れましたか。 neth:食生活はそんなに問題ないですね。もともと家で韓国料理が出ることが多くて、からいものも食べられるほうではあるので。あとは言語も結構なんとかなってて、メンバーだけで街に出たりもしてます。この前はAnthemとSSeeSと3人で梨泰院(イテウォン)の美容院に行きました。海外の美容院はちょっと怖かったんですけど、そのあと買い物とかもしてきました。 SSeeS:韓国は日本よりカフェが多くて、安くて美味しいところが多いので助かってます。でも食べ物はからくて合わないものも多いですね……。クッパ(ご飯入りスープ)とポッサム(茹でた豚肉をキムチ等と一緒に野菜に包んで食べる料理)は美味しかったですけど。あと、サイダーが美味しいです。 ――からいものが苦手だと、どうしても合わないものが多くなりますよね。 Meiy:俺もからいものが一切食べられないし、からいものじゃなくても好き嫌いが多い偏食なので基本的に食事は合わないですね。今は昼と夜に日本食を作ってくれる人がいるんですけど、それプラスいつも日本のカップラーメンを持参して食べるっていう生活を送っています。 ――それはちょっと大変そうですね。じゃあ、『VALORANT』のためにもうひと踏ん張りってところですか。 Meiy:そうですね。『VALORANT』にすべてを捧げてなんとか生きてます。 ――Anthem選手は2年目ですが、韓国生活はどうですか? Anthem:僕はもう慣れましたね。チームのサポートも去年と比較してもさらに充実しているので、困ることもそんなにないです。 ――それは良かったです。では最後に、今後の意気込みとファンのみなさんに向けたコメントをお願いします。 Anthem:とりあえず今は目の前のことを一生懸命やって、頑張っていたらプレイオフとかMastersとかが順々に見えてくるようになると思うので、1勝できたからといって気を抜かずに、去年0勝だったからとか気にせずに、勝つことがすべてなのでチームとして一丸となってやっていきたいと思います。 ファンの方々については、僕自身のファンっていうより「元Crazy Raccoon」の3人が加入してくれて、SSeeSも『PUBG』とか別ジャンルで人気を得てきた選手なので、色んなシーンからファンが多く入ってきてくれて増えているのかなという感じがします。T1に勝ったときに感動してくれたファンがいたことがすごく嬉しかったし、これからもっと感動させられるようなプレイがしたいなと思っています。 Meiy:デュエリストを使っているうちはプレイでチームを引っ張っていけるように、調子を崩さないようにパフォーマンス維持を最優先にやっていきたいというのが目標です。 ファンのみなさんはチーム結成時やチームが勝ててないときから期待を込めて応援してくれていた人たちも多いと思うので、この前の1勝で少しは期待に応えられたのかな。だけど、1勝で終わってしまったら、それはまた期待外れの結果になってしまうと思うので、これからも勝てる試合はちゃんと勝っていきたいです。そしてDFMのファンでない人たちも、俺たちを見て応援しようと思ってくれる人がひとりでも増えたらいいなと思います。 SSeeS:とにかくいまは上手く戦って、勝ちを重ねたいですね。ファンのみなさんがすごく応援してくださっているのはありがたいです。よければぜひ、ゲーム内のDFMバンドルを買って応援してほしいです! Medusa:そうですね、とりあえずDFMバンドルを買ってほしいのと……(笑)。意気込みはそんなに大きいものはないですけど、世界大会に出られたらいいなと思ってます。 ――十分大きな意気込みじゃないですか。 Medusa:いや、もともとは世界大会優勝が目標だったので。ファンのみなさんには、自分が一番遅くチームに合流したにもかかわらず応援してくださって、本当に感謝しています。いつもありがとうございます。 neth:残りの試合で勝てるように頑張って、Stage1で色々と経験が積めたらいいなと思っています。個人的に、本番はStage2かなとも思っているので、そこに向けて頑張ろうという感じです。あとはDFMバンドルもそうなんですけど、DFMのグッズが色々あるのでそれも買ってもらって、グッズを持って応援してくれたら、とても嬉しくなります。 以上、DFMスターター5名のインタビューをお届けしたが、いかがだっただろうか。試合後のインタビューとはまた違った雰囲気で、勝利の裏側や、現在の彼らの姿、目標をお届けした。読者のみなさんに楽しんでいただけていれば幸いである。
スイニャン