斎藤氏再選の裏にSNS・動画 投票の参考情報で新聞テレビ上回る 偽・誤情報だけでは語れない兵庫県知事選・前編【解説】
関連動画とは、石丸氏や玉木氏が映っている動画に限りません。関連動画で流れやすいのは、マスコミに批判的な言説であったり、既得権益批判だったりします。そうして、石丸氏や玉木氏やトランプ氏や斎藤氏の改革者としてのイメージが強化されていきます。 マスコミを含む既得権益VS改革者という物語の語り口=ナラティブはこうして生まれます。
一度そのナラティブを受け入れると、他のコンテンツが届きにくくなる「フィルターバブル」や同じような意見ばかりをこだまさせる「エコーチェンバー」や自分の意見に近い意見が正しく思える「確証バイアス」によって、その語り口を信じる気持ちはどんどん強まっていきます。(JFCファクトチェック講座 理論編2、理論編3)
しかも、「マスメディアが作り上げた虚像ではなく、我々がソーシャルメディアで応援する候補」という身近さを支援者は感じています。2020年に敗れたトランプ氏が2024年の大統領選で再選したのは、そういう背景があります。
「デマ」の作成者と拡散者の違い
兵庫県知事選はかつてなくデマが大量拡散した選挙だと言われます。では、どんなデマが流れたのか。まず、デマの分類や定義から考えます。 デマやフェイクニュースに関して、専門家の間では「偽情報・誤情報・悪意のある情報」などの分類をします。 「誤情報=意図的ではないが誤っている情報」、「偽情報=意図的に操作された情報」、「悪意のある情報=誤ってはいないが攻撃目的で流された情報」です。
では、偽情報や誤情報を作るのはどういう人達か。その動機から3つに分類することができます。「故意犯・確信犯・愉快犯」です。 「故意犯=間違った情報を意図的に流し、政治的・経済的な利益を得ようとする人」、「確信犯=正しいと信じ込み、間違った情報を作成する人」、「愉快犯=嘘をついて注目を集めたり、騙された人を見て面白がったりする人」です。 偽・誤情報は作成され、ソーシャルメディアに投稿されるだけでは拡散しません。それを見たり、シェアやいいねしたり、フォローしたりする人たちがいることで拡散します。 そして、そういった人たちの多くは「善意」や「正義心」からシェアをしています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人規模の調査で、実際に日本で拡散した偽情報について、シェアした人にその動機を聞いたところ、1位が「情報が興味深いと思った」30.0%、2位が「情報が重要だと感じた」29.2%、3位が「情報に対する同情や共感を他人と共有したかった」23.3%でした。(以上、JFCファクトチェック講座 理論編1) (後編では、実際にどのような偽・誤情報が拡散したのか、マスメディアとソーシャルメディアの分断と対策について解説します。JFCファクトチェック講座 理論編については関連記事リンクでご覧ください)
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。 (トップ画像はAIで生成しました)