【解説】「国際法」を巧妙にすり抜け…運航に必要な安全確認の検査を受けず 潜水艇“大破”…5人死亡か
■操縦していたツアー運営会社の最高経営責任者…妻はタイタニック号の乗客の子孫
改めて、潜水艇には5人が乗っていました。操縦していたのは、このツアーの運営会社の最高経営責任者であるラッシュ氏です。ニューヨークタイムズによると、実はこの男性の妻は、あのタイタニック号で亡くなった乗客の子孫だといいます。その乗客は、タイタニックが難破したときに、自らは救命ボートに乗る権利があったにもかかわらず、他の子どもたちを優先的に救命ボートに乗せるため船内に残って亡くなった人だということです。
また、過去に民間での宇宙旅行も経験した、イギリスの富豪で冒険家も乗っていました。その遺族は声明を出し「彼は情熱的な探検家であり、家族のため、ビジネスのため、そして冒険のために生きた。彼は私たちの人生に、決して埋めることのできない空白を残すだろう」とコメントしています。
■「爆縮」で瞬間的に大破したか…深海のすさまじい“圧”
では、もう一つのポイント、「大破の原因は何だったのか」です。 ロイター通信によると、今回、潜水艇の破片が見つかったのは、水深約4000メートルの海域で、その残骸の状況から、潜水艇は周囲の圧力で押しつぶされる「爆縮」が起きたことによって、瞬間的に大破したとみられています。
巨大な水圧がかかると物体がどうなるのか、海洋研究開発機構が公開している深海の水圧がわかる実験では、箱に取り付けたカップを海に沈めることで、カップにかかる水圧を確認していました。水深が深くなるごとに水圧がかかり、カップが徐々に小さくなっていきました。 実験では、水深約1000メートル地点まで潜りました。その場合、カップにかかる水圧は約100気圧。つまり、1平方センチに約100キロの重さがかかっていたということになります。わかりやすく言うと、小指の先に力士1人がのしかかるような重さです。 今回、事故があったのは水深4000メートルなので、この実験の約4倍の水圧が潜水艇にかかっていたということになります。
■潜水艇は「実験船」…運航に必要な検査をせず 国際法の「盲点」をつく
さらに、今回の事故でこの潜水艇をめぐるさまざまな課題も明らかになってきました。 実は、この潜水艇、過去にも安全上の懸念が指摘されていました。アメリカの複数のメディアによると、運営会社の元社員は5年前、潜水艇の「のぞき窓」について、タイタニック号が眠る水深4000メートルまで乗客を運ぶことを想定していたにもかかわらず、水深1300メートルまでの水圧に耐えられる強度しかなかったと指摘しています。