映画「【推しの子】」の推しポイント 1社製作と原作至上主義「みんな本気で向き合ってくれた」 井元隆佑プロデューサー語る
人気コミックを実写化した映画「【推しの子】-The Final Act-」がきょう20日に公開される。アマゾンプライムビデオでの連続ドラマ配信(全8話)に続く完結編。実写化発表の際には賛否両論巻き起こったが、評判は上々だ。東映の井元隆佑プロデューサーに製作の舞台裏を聞くと“推しポイント”が見えてきた。 推しのアイドルの子供に転生した双子が、殺害された母の死の真相を追う「【推しの子】」。ファンタジックな設定と芸能界の内幕をセンセーショナルに描くリアリティーを共存させ、原作は累計1800万部突破の大ヒットを記録している。 伝説のアイドル・アイ役の齋藤飛鳥が一度オファーを断ったと明かすなど、キャストにとっても重圧がかかった人気作。井元氏は「(実写化に)賛否は絶対あると思っていました。でも、作品すら知られないのが一番つらいこと。もっと頑張ろうと燃料を投下していただいた感じでした」と覚悟を明かす。 実写化に動き出したのは2022年3月。大作時代劇「レジェンド&バタフライ」を手がけた井元氏が、次作はまったく違うジャンルにしたいと「【推しの子】」に目を付けた。ちょうど翌月にコンペがあることが判明。まだアニメ化もされていない時期だったが何十社もの争奪戦になっていた。 「ドラマだけでも映画だけでも描ききれない」と考えていたところ、アマゾンとの縁ができ、連ドラ配信直後の映画公開というスキームを提案。見事に原作権を得て、最初の脚本打ち合わせで原作者の赤坂アカ氏に聞いた。 「『ぶっちゃけ結末はどうなんですか?』と。クライマックスがどういう流れなのかはおおよそうかがったので、一巻と最終巻を映画にして、その間をドラマにすればいけそうだと考えました」 こだわった“推しポイント”の1つが「1社製作」であること。複数企業で製作委員会を組むのが主流だけに、東映だけで製作委員会となるのは「約30年ぶりです」と異例のことだ。テレビ局やレコード会社などが製作委員会に加われば、リスク分散やタイアップの多角化などメリットも多いが、各社の思惑が絡み、身動きが取りづらくなるのも確か。 「リスクヘッジのために製作委員会を組むのはビジネスの手法としてはいいと思うんですけど、今回は本気で東映が作ると腹を決めた。真摯(しんし)にクリエイティブにだけ向き合えたのは大きかったです。大人の事情で物事を決めることがなかったので」 その延長線にあるのが「原作至上主義」だ。 「みんなで原作愛を持ち寄り、美術のスタッフも『これ、原作にあったので入れておきました』とか、こちらが驚くくらい。知恵を持ち寄った、いい現場になれたなと思います」 原作同様のカラフルな髪色も、すべて地毛を染めている。4カ月半の撮影期間は、常にキープ。数週間ごとに染め直す必要があり「それくらいみんなが本気で向き合ってくれた」と感謝する。 「今の時代、いいウィッグもありますが、あえて染めました。最後にキャラクターに魂を入れる作業の1つだと思っていて、ちょっとでも(役を)抜かない時間を作りたかった。キャストのみなさんには“演じてない時間”を少しでもなくしてほしいと考えました」 主演の櫻井海音がバラエティー番組に出演する際には「アクア(役名)のつもりで出てほしい」と伝えたという。 5日には、嵐の二宮和也が重要キャラクター・カミキヒカルを演じることが明かされた。「僕の中のラストピース。映画では一挙手一投足に期待していただきたいと思います」。原作は11月に完結。ついに「【推しの子】」がグランドフィナーレを迎える。