『インサイド・ヘッド2』は“疲れた大人の心”も癒すのか?改めて検証してみた!「私、こんなに頑張って生きているんだ…」
アニメーション映画として歴代No.1となる全世界興収16億9800万ドル(BOX OFFICE Mojo調べ)を記録し、日本でも興収50億円を超える大ヒットとなったディズニー&ピクサーの『インサイド・ヘッド2』。そのブルーレイ+DVD セットと4K UHD+ブルーレイ セットが発売中だ。 【写真を見る】ヨロコビやカナシミたちの前に現れた“思春期”のボタン…押したら新たな感情たちが出現!? イマジネーション豊かな世界観で魅力的なキャラクターたちの大冒険を描いてきたピクサーが、“人の頭の中に広がる感情たちの世界”を描き、世界を驚かせた前作『インサイド・ヘッド』(15)から9年。本作では、物語の主人公である感情たちの持ち主の少女ライリーが高校入学を控える13歳になり、これまで経験したことのなかった複雑な“感情の嵐”に巻き込まれてしまう。その姿に、ライリーと同年代の中高生はもちろんのこと、かつて多感な時期を経験したことがある大人世代からも、共感や心に響いたという声が多数寄せられていた。 そこでMOVIE WALKER PRESSでは、「『インサイド・ヘッド2』は大人の心を癒してくれるのか?」をテーマにした“社内実験試写会”を決行。社会の荒波にもまれる日々に、すっかり疲れ果ててしまった20代から50代までの幅広い世代の社員たちに本作を鑑賞してもらい、それぞれ共感した点や心に刺さったシーン、癒されポイントなどについてアンケートを実施した。その回答の一部と共に、改めて本作がなぜ世界中の人々に支持されたのかをひも解きながら、今回発売となったブルーレイやDVDの魅力から、ボーナス・コンテンツの見どころまで、たっぷりと深掘りしていこう! ■複雑な感情や思考もスッキリ!客観的に自分と向き合える まずは簡単に「インサイド・ヘッド」シリーズの世界観をおさらい。ライリーという明るく元気な女の子の頭の中で、生まれた時から彼女を見守るヨロコビをはじめ、カナシミやイカリ、ムカムカ、ビビリの5つの感情が、ライリーを幸せにするために奮闘している。前作では、家族の都合で引っ越すこととなり寂しい気持ちを抱えるライリーの頭の中で、正反対の感情であるヨロコビとカナシミが大冒険を繰り広げ、「人生にカナシミは必要なのか?」という永遠の問いにひとつのアンサーが示された。 そして本作では、高校進学を控えたライリーが親友たちと共にアイスホッケーのキャンプに参加することになるのだが、その前夜に彼女の頭の中に異変が。ヨロコビたちのいる司令室に突如として大掛かりな工事が入り、どこからともなくシンパイとイイナー、ハズカシ、そしてダリィという新たな感情が出現。ヨロコビたちと対立する彼らは、ライリーがこれまでの人生で形成してきた“ジブンラシサの花”を遠くへと捨て、ヨロコビたちを秘密の保管庫へ閉じ込めてしまう。 「大人になるって、感情が増えていくことなんだ…」(20代・女性)という感想からもわかる通り、これまではシンプルな5つの感情だけで構成されていたライリーの頭の中に、思春期という誰もが通過する大きなターニングポイントを迎えるにあたってまったく異なるタイプの感情ができあがる。その感情同士が衝突したり、葛藤したり、時には手を取り合うことで、ライリー自身が少しずつ成長していく様子が可視化されていく。 「反抗期を迎えたから感情を操作するスイッチが変わるなど、自分のなかの感情や行動が変わるのを脳内で起きるファンタジーに例えているのが巧妙」(20代・女性) 「自分にもマイナス思考な一面があったりするけど、それは私のなかのシンパイが働いているんだなあと、感情→思考の起因がわかった気がしてよかったです」(20代・女性) 「自分も学生時代に不安に感じたり無理したり、ライリーと同じような体験をしたので、その時の感情たちがこんなふうに動いていたのかなって思うとなんだかおもしろかった」(20代・男性) すでに思春期を通過済みの社員たちの声で最も目立ったのは、やはり成長のなかで知らず知らずのうちに経験してきた思考や感情の複雑化が、本作を通して客観的に見つめることができたという点。大人ならではの視点の感想ではあるが、よくよく考えてみれば、どんな人でも“自分自身の感情”ほどハッキリとわからないものはないはず。自分の“いま”を見つめ直したり、過去の“あのころ”を振り返ってみたり。最も身近な存在である自分自身をより深く知るきっかけになる作品といえるだろう。 ■感情たちに共感することで、自分自身をもっと好きになれる! 前作から登場するヨロコビやカナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリの5つの感情は、人間の基本的な感情として知られているもの。そこに今回新たに加えられた4つの感情は、「ティーンにとって難しく、ある意味ミステリアスなもの」だと、本作の心理学監修を務めたダッチャー・ケルトナー博士は説明している。 カナシミにもきちんとした役割があったように、新たに登場する4つの感情たちにもそれぞれ重要な役割がある。そしてなによりも、全部の感情たちが宿主であるライリーの人生をより幸せなものにしようと精一杯に奮闘している。そんな感情たちのひたむきな姿に心を打たれた社員たちの多くは、同時にある重要なことに気付いたようだ。それは、どの感情も映画のなかだけに存在しているのではなく、自分自身のなかにもあるものだということ。 「ヨロコビも、空回るとネガティブな方向に行くし、シンパイはうまくいけば危険回避にもなる。どの感情も行き過ぎるとポジティブにもネガティブにもなるけれど、それはつまり、どの感情も持っていていいということなんですね」(30代・女性) 「映画のなかの感情たちは全員ライリーそのもの。それに気付かされると、私自身も『頭の中で、自分のためにこんなに頑張って生きているんだ』と思えてきて、自分を褒めてあげたい気持ちになりました」(30代・女性) 「ポジティブな気持ちだけでなく、ネガティブな気持ちも自分にとって大切な心の動きなんだなと改めて気付かされた。普段仕事をしていても心配に感じたり、いやだな、つらいな、という気持ちになったりすることもありますが、これからはそんな気持ちにも“ありがとう”と思えそうです!」(20代・男性) このように自分自身の感情を肯定するきっかけにもなり、なかには「いろんな感情の動き、記憶、すべてが自分の成長にとって大切だとあらためて気付き、自分のことが好きになりました」(20代・男性)や「大人になったらヨロコビが減っていくというシーンがあったけれど、そうなりたくない!自分のなかのヨロコビを奮い立たせなければ!」(40代・女性)など、より前向きな方向に鼓舞されたという声も見受けられた。 ちなみに劇中では、ライリーの両親や親友たちの頭の中も登場する。それぞれの司令室には同じように感情たちがいるのだが、ライリーの頭の中ではヨロコビがリーダーを務めているように、その人の性格によって中心に立つ感情は人それぞれ。「自分のなかにもいる感情たち。自分だったら、どのキャラクターがメインで動いているのかな?と考えながら観ていました」(20代・男性)という見方をすれば、魅力的な感情のキャラクターたちがもっと好きになるかも。 ■自己肯定感が爆上がり!監督が込めたメッセージが心に刺さる メガホンをとったケルシー・マン監督は「この映画は、自分自身を受け入れることをテーマにしています。欠点があっても、ありのままの自分を愛すること。愛されるために完璧である必要はない。それがこの映画の根底にあるテーマです」と語っている。 このメッセージが作品にしっかりと反映されていることで、多くの大人たちにもダイレクトに刺さる。社員のなかからは「自分みたいに、自分に自信が持てない、自己肯定感が低めな人にこそ観てほしい!」(30代・男性)や、「仕事や学校生活など日々の生活をつらいと感じてしまいメンタルが弱っている人が観れば、少し前を向ける気がします」(30代・男性)という言葉が。 もちろんそれは、いまの自分を肯定するだけでなく、ふと振り返った時にちょっぴり恥ずかしくなってしまうようなこともある“あのころ”の自分をも優しく包み込んでくれるものだ。 「思春期の見栄っ張りや羨望からくる切なかった気持ちを、“成長”として理由づけてくれた。あれは成長のために必要なことだったんだと、受け入れられるようになる人がきっといる」(20代・女性) 「シンパイ性な性格をネガティブに思っていたけれど、うまく付き合うことができれば自分の強みになるんだと感じました」(30代・女性) 「ネガティブな感情や思考はよくないとされがちですが、そんな感情も自分自身を形成するには非常に重要で、つらい時の支えになってくれたり、自分を助けてくれたり。あなたはあなたのままでいいと肯定してもらえたような気持ちになりました」(30代・女性) 「『インサイド・ヘッド2』は大人の心を癒してくれるのか?」をテーマに掲げた今回の社内試写会の実験結果は、あらためて言うまでもないだろう。 ■今作から観ても楽しめる!ひと目でわかる、ユニークな世界観と感情たち 意外なことに、今回の社内実験試写会に参加してくれた社員のなかには、前作を観ておらず今回初めて「インサイド・ヘッド」の世界に触れたという人もちらほら。そんな人たちからは、予備知識がない状態だからこそ気付ける視点や、「前作を観ていないから」と避けてしまっている人の気持ちを動かしてくれるであろう感想が寄せられた。 「まっさらな状態で鑑賞しましたが、話の内容はすぐに理解できました。思春期の悩みがうまく映像化されていたと思います。感情もひと目でわかるし、映像表現がすばらしいと感じました」(40代・男性) 「ディズニーのアニメーションを観るのは久しぶりでしたが、クオリティの高さにとても感動しました。想像していたよりも内容が奥深く、幅広い世代の方が楽しめる作品だと感じました」(30代・女性) 「感情という誰にとっても身近なテーマを題材にしているので、今作から観てもキャラクターの特徴を理解することができ、十分に楽しめるはず」(30代・女性) 「キャラクターたちがかわいかった!おもしろかった!というだけでなく、鑑賞後に自分の気持ちや感情と向かいたくなる点が魅力的」(30代・女性) ■圧巻の映像表現と“遊び心”の裏側は、ブルーレイのボーナス・コンテンツで! また、ストーリーやキャラクターの魅力、クオリティの高さはもちろんのこと、随所にユーモラスな遊び心が織り交ぜられているのがピクサー作品の醍醐味のひとつ。本作では3DCGの世界観に、ライリーが子どものころに好きだったテレビアニメのキャラクター、ブルーフィーが2Dの手描き風アニメーションで登場したり、どこか日本のゲームキャラクターを彷彿させるランス・スラッシュブレードなどが登場してコメディリリーフを担ったりなど、世界観構築のバランス感覚が絶妙。 「ブルーフィーの登場シーンは純粋に技術に感動しました!3Dのなかに2Dの絵があって、でも影とかは自然で、すごい!」(20代・男性) 「平面的なテレビアニメのキャラクターやゲームキャラが出てくるなど、細かくキャラクターが作り込まれている部分が視覚的にも楽しめたポイントでした」(30代・女性) 「ランス・スラッシュブレードは、緩急の“緩”を一心に担ってくれておもしろかったです!RPGっぽい動きしかできないとか、強そうな武器をもっているのに“転がる”が必殺技なんだ…とか、シュールな笑いが好きでした」(20代・女性) 「“秘密の保管庫”のシーンは終始おもしろかった!頭の中に広がる世界の表現が本当に秀逸」(30代・女性) 今回発売されるブルーレイ+DVD セットと4K UHD+ブルーレイ セットのボーナス・コンテンツでは、新たに登場する感情たちの誕生秘話を監督やスタッフ陣が語る「新しい感情たち」に加え、秘密の保管庫に暮らしているキャラクターたちに迫った「保管庫の中」、そして本編には収まらなかった5つの未公開シーンが収録。緻密かつ遊び心たっぷりに作りあげられた本作の魅力を、さらに深くまで知ることができるだろう。 もちろんブルーレイの最大の魅力は、好きなタイミングに好きなだけ本編を観ることができること。ちょっぴり落ち込んだ時に、心に響いたシーンを観返してみるのもいいだろう。観る時の状況や心の状態で、そのたびに新たな発見や気付きを得られること間違いなしだ。 「初見ではさらっと観ていたホッケーシーンの迫力や、様々な仕掛けがある感情の世界の出来事、登場人物たちの複雑で細やかな表情(動揺した時の目の泳ぎ方とか)などが、とてつもなく精巧で作り込まれていることに気付けて『映像表現としてもすごいクオリティの映画だったんだ!』と感じました。繰り返し観れば、いつでも再発見がありそうです」(30代・女性) そして、「思春期に入る前の子どもたちや、子どもを持つ親にも観てほしい内容!」(30代・女性) 「中学生・高校生時代にうまくいかなかった思い出がある人に見てほしい。あの時、自分の思い通りにうまくできなかったのは、成長途中だったからで、誰しもが通る道なんだ、という気付きになると思います」(20代・女性) 「最近なにをしてもいまいち楽しくない、時間がすぎるのだけが早く感じる大人たちと、これから思春期を迎える、または真っ最中の子どもたちに観てもらいたい」(40代・女性) というコメントにもある通り、大人から子どもまでどんな境遇の人の心にも沁みわたる、まさにディズニーアニメーションの真髄ともいえる魅力が詰まった本作。「もし子どもの時にリビングで本作を観ていたとしたら、大人になった時に実家での“記憶”として、信念の泉に浮かんでいそうな作品だと思います」(20代・女性)。是非ともブルーレイ+DVD セットと4K UHD+ブルーレイ セットを手に入れて何度でも、頭の中にナツカシが出てくるまで味わい尽くしてみてはいかがだろうか。 文/久保田 和馬