NYCB、不動産の危険兆候見過ごす-拡大路線と集合住宅集中が裏目
(ブルームバーグ): 2021年春に二つの米地銀トップがタウンホールを開催した時のムードは、実に目がくらむようなものだった。
米地銀持ち株会社ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)とフラッグスター・バンクという二つの金融機関が手を組むことで、より手ごわい存在になるはずだった。
NYCBのトーマス・カンジェミ最高経営責任者(CEO、当時)は「私はそれを白紙のページと見なし、共に描くピカソと呼ぶ」と発言した。
それから3年が経過し、ニューヨークの不動産オーナー向け金融サービスで知られるNYCBは、深刻な困難に直面している。先週にはリスク監視能力の重大な脆弱(ぜいじゃく)性を開示し、カンジェミ氏からアレッサンドロ・ディネロ氏へのCEO交代も同時に発表された。3年前のタウンホールを開催したフラッグスター側のトップがディネロ氏だった。
NYCBが1月末に公表した昨年10-12月(第4四半期)決算で70%の減配や、アナリスト予想の10倍を超える5億5200万ドル(約830億円)の貸倒引当金計上が明らかになり、市場に衝撃が走った。新たなトップが不良債権に備える資金をさらに積み増すのではないかと投資家は懸念している。
格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスとフィッチ・レーティングスは、NYCBをジャンク級(投機的格付け)に格下げし、年初来の株価下落率は73%に達した。
ここまでに至る経緯は、金融リスク波及とルール変更、規制・監督当局の変化に起因する。ニューヨーク州では家賃引き上げを制限する法改正が19年に行われたが、NYCBは融資ポートフォリオへの打撃を認識せず、拡大路線を推進した。
フラッグスター買収に続き、昨年3月には経営破綻した米地銀シグネチャー・バンクの全ての預金と融資ポートフォリオの一部を取得し、NYCBの規模はほぼ倍に拡大した。これに伴い、総資産1000億ドル以上の中堅行に自己資本積み増しを求める新たな規制対象になる。