多様な方法で入力できるコントローラーがプレイを補助 肢体不自由児向けゲームイベント『パラeスポーツ・フェスタ』レポート
訪問型病児保育や障害児保育などの保育事業をはじめ、子育て領域の社会課題解決に取り組む認定NPO法人フローレンスが2024年8月24日、『パラeスポーツ・フェスタ~インクルーシブ・テックで遊ぼう!~』を実施した。わずかな力で動かせる入力デバイスや視線入力などのインクルーシブ・テクノロジーを用いて、『スイカゲーム®』や『ぷよぷよeスポーツ(以下、ぷよぷよ)』といったパズルゲームを始めとしたゲームを肢体不自由の児童が体験できるイベントとなっている。 【写真】実際に体験したフレックス・コントローラーや視線入力できるコントローラー 肢体不自由の児童がゲームを楽しめるようにするため、どのような工夫がされているかなどをレポートしたい。 ・顎や視線入力でプレイも 筆者が実際に体験 会場には複数のモニターと外付けのコントローラーが設置されている。外付けのコントローラーには本イベントの協賛でもあるテクノツール株式会社が開発監修・販売している『Flex Controller(フレックス・コントローラー)』が接続されている。Flex Controllerは一般的なコントローラーとしても使用可能。L-StickやAボタン、上ボタンなど、全ボタンに対応したUSBとジャックが付いており、このUSBとジャックに外付けのコントローラーを差し、そのコントローラーを操作することで入力できるようになる。 比較的のんびりプレイできる『スイカゲーム』を体験。『スイカゲーム』は、L-StickとAボタンしか基本的には使用しない。外付けのコントローラーとして、L-StickのUSBにはかなり大きい青色のスティック、Aボタンのジャックにはこれまた大きい黄色のボタンを装着した。青色のスティック、黄色のボタンはいずれも軽い力で入力でき、とにかく大きいため手や指が不自由でも操作しやすそうだ。 ちなみに、外付けコントローラーは様々なタイプがあり、指や腕に巻き付けるクリップタイプのもの、ボタン形式でL-Stickの操作ができるものなど、自分自身の身体に合ったものを選べる。参加者も自分に合った外付けコントローラーを探しながら、自分好みのカスタムを見つけてゲームに熱中していた。なかには、Aボタンを子どもが、L-Stickを保護者が操作する光景も見られ、ゲームの操作方法・楽しみ方がいかに多種であるかが伺える。 次は『スイカゲーム』よりも難易度の高い『ぷよぷよ』に挑戦。『ぷよぷよ』ではL-Stickに対応した青色のスティックはそのままではあるが、Aボタンは指や手ではなく頬・顎で押すタイプの外付けコントローラーを選択。先端の赤い部分に触れると入力したことになるため、入力したい場合は顔を近づけて押す必要がある。 いざプレイしてみると、やはりAボタンの操作に苦戦して、筆者お得意の“階段積み”が上手く作れない。さらには、ミスをするとうっかり「うわっ!」と声を出してしまい、その拍子に頬がボタンに当たり、ますます予期せぬ方向に積み上がっていく。ただ、次第に感覚を掴み、なんとか5連鎖までは決めることができ、手を使わなくても十分楽しめた。 また、視線入力できるコントローラーも設置されており、視線入力のみで『スイカゲーム』をプレイした。パソコンに設置されたセンサーが視線をキャッチして、画面上に赤い丸として視線の向きが反映される。視線を右側の正方形に向けるとカーソル(果物)が右に動く。反対に左側の正方形に向けるとカーソルは左に動く。真ん中の籠の上部にある長方形を数秒間凝視すると、果物が落下する仕様になっている。 慣れない操作に動揺したため、視線が一向に定まらず、果物を落下させることが全くできない。筆者含めて操作に苦戦している人は少なくなく、難易度はかなり高い印象。しかし、センサーをその人特有の目の動きに合わせて調整できるため、ちょっとの慣れと調整で思い通りの操作が可能になるかもしれない。 ・「ゲームをきっかけに世界を広げてほしい」 今回は、本イベントの参加者に話を聞くことができた。外付けコントローラーを足元に2つ置いてリズムゲームをプレイするなど、テクニカルなプレイを見せていた先天性ミオパチーを持つ11歳の児童は、「いろいろゲームができて楽しかった」と語ったが、一方で、「『ぷよぷよ』で連鎖が出せなかった」「階段積みがあまり上手くできなかった」と悔しさも吐露した。いつも家で『ぷよぷよ』をする際は連鎖ができるものの、今回は大勢の参加者がいるために本来の力が発揮できなかったとのことだ。 また、パリスター・キリアン症候群のため、物を持つのが苦手だったり、物に触れることに抵抗があったりなどの症状を持つ5歳児の母親は、参加理由として「いろいろなものに触れるきっかけとして参加しました」と回答。プレイする様子を見て「リズムゲームをプレイしているとき、ボタンを押すことにより、そのアクションが画面に反映されていることをとても楽しんでいました」と振り返る。自分が触れることで何かしらの反応があることに驚きと面白さを覚えており、その様子を見て「今回ゲームに触れたことをきっかけに自分の世界を広げてほしいですね」と目を細めた。 もちろん、ハンディキャップがあることにより、プレイが難しいジャンルのゲームは存在する。ただ、肢体不自由の人が気軽にゲームをプレイできる環境が、確実に整備されていると感じた。また、いつもと違う環境で緊張する体験や、うまくいかず悔しいといった体験のように「こどもにとって当たり前」の経験を味わえたこともイベントならではだったのではないかと思う。本イベントが、参加者の今後の世界を広げる一つのきっかけになることを期待したい。
望月悠木