スニーカーの王様がおにぎり屋に転身して1年…富を得ても所持する服は2着の本明秀文さんが「商売」のヒントを得る場所とは
日本のスニーカーブームを牽引してきた「アトモス(atmos)」の創業者であり、現在はおにぎり専門店「おにぎり まんま」を経営する本明秀文氏。なぜスニーカーの次におにぎりを選んだのか。多大な成功を収めながら服を2着しか着回さない理由とは。「ビジネス」よりも「商売」が好きという独自の審美眼や、ふだんのライフスタイルで意識していることを本人に聞いた。 【画像】うれしそうに布を広げて説明する本明氏
熱狂的な“信者”がいないと商売が成り立ちづらくなっている
インタビュー当日、本明氏は大きな荷物を背負って現れた。 何が入っているのかを聞くと、「韓国の骨董市で仕入れた麻の布」だと言う。 「何でもかんでも物が売れる時代は終わり、今は『手に入りづらい物を売る』のが商売の鉄則です。ちなみに、この手織りの麻は韓国軍が北朝鮮に行って買ってくるような代物で、市場にほとんど出回らない“レアもの”。これを1つ1万円で仕入れて、欲しいという人に今から4万円で売りにいくんです」(本明氏、以下同) そんな本明氏がatmos退任後に手がけている「おにぎり まんま」のおにぎりは、仕込みに多大な時間がかかるため、提供できる量が限られている。にもかかわらず、新宿店はいつも長蛇の列ができている。 「『まんま』の一番人気のおにぎりは『卵黄×肉そぼろ』で、先月は月間6000個くらい売れました。それでも追いつかないくらい行列を作るお客さんが後を絶ちません。 私の商売におけるスタンスはおもしろいか否かですが、最近はお客さんの興味が細分化されていることもあって、『熱狂的なビリーバー(信者)』がいないと商売が成り立たなくなってきていると思います。その感覚はスニーカーを売っていても、おにぎりを握っていても変わらないわけです」 また、世の中の格差が一段と広がりつつある今、知識社会が顕著になっていると本明氏は説く。 「例えば、アメリカの半導体メーカー・NVIDIAは、なぜ時価総額を伸ばしているのか。そのすごさをわかっていないとビジネスで戦略を立てることもできないし、国籍関係なく努力しない人は落ちていく。世の中が急速に変わるなか、海外のことを知らなければ、どうにもならなくなる時代が来ていると言えるでしょう。 私は月に2回くらい海外に行くようにしています。家族がアメリカに住んでいるということもありますが、大学生の息子は『日本人やめる』と言っているんですよ(笑)。というのも、大学を休学して米軍に入隊したことで、アメリカの市民権がとれてしまうからです」