起業家は幸せなのか?
変化を実現する道のりには、困難や失望、恥、不安などがつきもの
ハリウッドの大手タレントエージェンシー、CAAの創設者であるMichael Ovitzも、著書の中で自身の苦難の経験を語っています。 「会社のエントランスをくぐるたびに、高校の期末試験前のような寒気に襲われました。コストや諸経費を賄うために、今日はいくら稼がなければならないのか。もし事業の変動により資金が尽きてしまったらどうするのか。デスクに座って仕事を始めれば、一時的には焦燥感が収まるのですが、この不安はCAAを辞める日まで続きました」。 実際、起業家の間では「不満」や「困難」、「失望」、「恥」、「不安」といった言葉がよく出てきます。世界や自分の現状に対する不満が、新しいことを始めようとする原動力となり、起業家精神を刺激するのでしょう。そして、大きな変化を実現する道のりには、困難や失望、恥、不安などがつきものなのです。 個人的なことを言えば、私も常にいろいろなことに不安を感じています。どれほど成功しても不満が残り、細かいことをあれこれ気にして「これのせいですべてが台無しになるのでは」と心配してしまうのです。ちなみに、私のストレングスファインダーの結果では、「ポジティブ」の資質は34段階中30位と最下位に近いランキングでした。現状に満足せずに進み続けるためには、心配性なくらいなほうが良いと考え、Coral Capitalのバリューの1つとして「パラノイアであり続ける」を掲げているほどです。 結局のところ、起業家は幸せなのでしょうか。答えは複雑です。今は幸せかと聞かれれば、おそらく「ノー」と答える人が多いでしょう。しかし、後から振り返ってみれば、答えは「イエス」に変わるのではないでしょうか。起業の道のりは、痛みや苦しみに満ちています。しかし、その痛みや苦しみが深い充実感をもたらし、最終的には何年もあとに違った形の、より深い幸せにつながるのでしょう。
James Riney