高値が高値を呼ぶ「令和のコメ騒動」は2025年も続くのか? 業者も「コメがどこにあるか分からない」と嘆く“コメ不足”の根本的要因
2024年に話題をさらった「食」の問題といえば、「令和のコメ騒動」だろう。コメが一時的に手に入らず、多くのメディアにその光景が取り上げられた。しかし、年が明けても、昨夏の「騒動」に端を発し、米価は上がり続けている。高値が高値を呼ぶ狂騒は、いつまで続くのか。【山口亮子/ジャーナリスト】 【写真】「やば…」2024年コメ価格暴騰の異様さが一目で分かるグラフ
コメがどこにどれだけあるのか
新潟県産コシヒカリの業者間取引の価格は最近になり、4万円の大台に乗った。業界関係者はこのことを衝撃をもって受け止めている。新潟県産コシヒカリといえば、産地品種銘柄の頂点に君臨する。コメ騒動が本格化する前の2023年産米だと、農林水産省が公表するその相対取引価格は、1万6927円だった。1年でおよそ2.4倍にはね上がった計算になる。 そもそも2024年産米の相対取引価格は、全銘柄の平均が2万2700円(2024年9月 )で始まっている。全銘柄の平均が前年までの最高ランクの価格を上回る異常事態だ。農水省は掲載の表の通り、2024年とそれ以前をそのままでは接続できずに、グラフで5500円分を省略する荒技に出た。価格の暴騰ぶりが分かる。
青天井のような値上げの要因には、大まかにいうと次の二つがある。 (1)コメがどこにどれだけあるのか、が誰も分からない (2)コメの価格がどこまで上がるか分からないことによる売り惜しみ だったら今のうちに買っておこうという人が一部にいて、米価が上がっている。少し硬い言葉で言い換えると、こうなる。 (1)商流の複雑化 (2)農家や流通業者らによる保管や囲い込み まず(1)商流の複雑化から説明したい。 いま最も焦りを募らせているのは、集荷業者や卸といったコメの中間流通業者である。ある業界関係者はこうボヤく。 「コメがどこにあるか分からない。昨夏のコメ不足もあって、農家から消費者までの商流、商いの流れが複雑になり過ぎている」
コメを手元に置く農家が増えている
令和のコメ騒動を思い出してほしい。スーパーにもドラッグストアにもコメがない事態に、消費者はどうしたか。ふるさと納税の返礼品に指定する、ネット通販で農家から直接買うなど、あの手この手でコメを調達する人がいた。 その結果、これまでにあったJAを経由して店頭でコメを買うという商流がかき乱されてしまった。消費者と直接つながる農家は増えている。コメの産地では、これまで出入りしなかった集荷業者が現れていると聞く。 集荷で最も力を持つのがJAで、その集荷率は2023年産米で前年並みの54%だった。JAはコメを潤沢に持っているというこれまでの常識が、2025年は通用しないかもしれない。2024年産米でこの集荷率を維持するのは、難しいだろう。 商流の変化は、「米の消費動向調査結果(令和6年11月分)」にも表れている。これは公益社団法人・米穀安定供給確保支援機構が公表している。伸びたのが「縁故米」と呼ばれる「家族・知人などから無償で入手」と、「インターネットショップ」だった。 米価の高騰で家計が苦しいと被害者意識を持つ消費者もいる。否定はしないが、高騰の一因は消費行動にもあるのだ。 続いて(2)生産者や流通業者による保管や囲い込み――要は、売り惜しみ――である。令和のコメ騒動で米価が上がった結果、これが起きた。今後もっと米価が上がるかもしれないから、それまで手元に留めようという動きだ。 稲作農家の経営の規模は拡大している。小規模な農家は一般的に収穫したコメを秋にまとめて売り払う。大規模になると、大きな倉庫を整備する農家が少なくない。年間を通じて出荷できる体制を作り、販路を広げたり、相場が上がったときを狙って出荷したりする。 そうしたなかに、今後も相場が上がるとにらみ、コメを手元に置く農家が相当数いるとみられる。もちろん、売るタイミングを間違えれば損をする。だから、年明けのコメ相場の情報を固唾をのんで見守る農家は多いはずだ。