こだわりが強いのは、大人の発達障害「ASD(自閉スペクトラム症)」のせい?【40代50代・「大人の発達障害」を理解する⑥】
自分のやり方に強いこだわりがあり、臨機応変に対処できず、仕事を期日までに終わらせられない…といった傾向は、ASD(自閉スペクトラム症)の人に多くみられる。このこだわりが強いことで起こる困り事について、医学博士で発達障害を専門とする司馬理英子先生に伺った。 「誰にでも、何かをするときには自分のやり方があると思います。しかし、ASD(自閉スペクトラム症)の人はそのこだわりが強すぎてトラブルになることがあります。 ASD(自閉スペクトラム症)には、受動型、積極奇異型、孤立型などのタイプがあり、それぞれに違う困り事があります。この『こだわりが強い』傾向は共通に見られる特性ですが、ASD受動型でこの傾向が強い人のケースを見ていきましょう」(司馬理英子先生) ※大人の発達障害についての基礎知識は第1回<大人の発達障害とは? 今、増えている理由、症状や特徴、治療法について>参照。
【ASD受動型のY美さんの場合】細部にこだわりすぎて全体が把握できない
Y美さん(40歳)は小学生の息子が一人と夫の三人暮らし。最近パートで事務の仕事を始めた。仕事は多岐にわたり、最初の頃は慣れずに時々パニックになることもあったが、やっと慣れてきた。 口数が少なくおとなしく、言われたことは一生懸命行う。自分の仕事の進め方に強いこだわりがあり、ひとつひとつ丁寧に物事を順序立てて仕上げていこうとする。そのため、何か引っかかることがあると、そこで足踏みをして止まってしまう。 例えば、企画書の作成をしているときに、一部の内容変更を命じられたり、気になる部分があるとそこで止まってしまい、その先に進めなくなる。その結果、締め切りに間に合わないことも。本来ならば、気になる部分を飛ばして、できるところを先に進めておいて、最後にその部分に戻るようにすれば間に合うかもしれない。 しかし、Y美さんの場合、順番通りに進めないと気がすまないという強いこだわりがあり、臨機応変に対処することができない。