スマホの普及とともに蔓延した、知らぬ間に若者を蝕む「7つの災厄」
いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行した。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。 『君はどう生きるか』連載第23回 『コミュ力は「才能」でも「遺伝」でもない!やってみれば人間関係が激変する、コミュ力の磨き方』より続く
面白いけれど、苦しい時代
ぼくは、10代の若者に、よく「今、君は、とても面白いけれど、苦しい時代に生きているね」と言う。 「とても面白い」というのは、君も知っているように、あらゆるサービス、情報、商品がかつてないほど溢れている世の中になったことだ。 君はたくさんのモノの中から、好きなモノを選ぶことができる。 少しの商品しか並んでないお店の中に入ってもワクワクしないよね。でも、いろんな色のいろんな形のいろんな種類の商品が山ほどあるお店に入れば、なんだかウキウキしてくる。 これが「とても面白い」ということだ。 でも、だからこそ、「苦しい時代」にもなっているとぼくは思っている。 どうしてか?
情報量はかつての“6500倍”
総務省の統計によれば、インターネットの情報量は、2000年から約20年で、約6500倍になっているそうだ。 つまり、「美味しいお店」とか「お勧めのコスメ」「役に立つ英語の勉強法」なんていう情報の量が6500倍になったんだ(たぶん、あっと言う間に、1万倍とか10万倍になるだろう)。 20年ほど前は、たとえば「英単語の効率的な覚え方」をネットで検索したら、10の方法が見つかったけれど、今は6万5000以上の方法が見つかるということだ。 6万5000以上の「英単語の効率的な覚え方」の中から、君は君にぴったりの方法を見つけられるだろうか。 「人生のアドバイス」をくれる人が20年前は10人だったのに、今は6万5000人いるという言い方もできる。そんなにいたら、混乱するだけだよね。 いろんな商品があるお店に入ればウキウキするけど、いろんな商品がありすぎるお店に入ると、疲れるね。それも、まともな商品とニセモノの商品やひどい商品が同じ顔をして並んでいたりすると、とても混乱する。 インターネットは、君も知っているように「ホンモノとニセモノがごたまぜになっている世界」だ。やっかいなことに、ニセモノの方が、ホンモノよりホンモノっぽい顔をしている場合も多いんだ。 そんな世界と君はとても密接につながっている。そう、「スマホ」によって。