良品計画、イオン、丸井グループ……「ホラ吹き」と言われた零細企業が数々の大企業を動かした「ハブ力」とは
品質を劣化させることなく服やペットボトルを何度でも再生できる「水平リサイクル」の独自技術を武器に、世界進出も視野に入れるJEPLAN(本社・川崎市)。しかし、同社の強みは決して技術だけではありません。これまで無印良品、イオン、セブン&アイ・ホールディングスといった多くの企業と提携し、ビジネスの仕組みを構築してきた実績を持っているのです。創業17年の小さなベンチャー企業が、名だたる大企業を巻き込んでこられたのは、なぜなのでしょうか。
【岩元美智彦(いわもと・みちひこ)】 JEPLAN(旧・日本環境設計)取締役 執行役員会長。 1964年鹿児島県生まれ。 北九州大学(現・北九州市立大学)卒業後、繊維商社に入社。 2007年1月、現社長の髙尾正樹氏とともに日本環境設計を設立。2015年アショカ・フェローに選出。 著書に『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』(ダイヤモンド社)。】
“大恩人”無印良品・金井会長の金言
岩元美智彦会長がJEPLAN(当時の社名は日本環境設計)を創業したのは2007年のこと。当初、同社が世の中に打ち出したのは、使わなくなった綿製品をリサイクルして燃料になるバイオエタノールを生産する、という画期的な事業でした。ところが、世界に例のない独自技術を確立したにもかかわらず、ビジネスとしての成長を見いだせない日々が続きました。岩元会長が、こう語ります。 「循環型社会をつくるには技術を持っているだけでは不十分で、リサイクルの原材料をどうやって安定的に集めるかが課題でした。つまり、衣料品を回収する動線をつくることこそが、最重要ポイントだったのです」 当時は、まだ社員3人の零細企業。衣料品を回収するための提携先を探して各所を訪ね歩きましたが、空振りの連続。「ホラ吹き」「そんなことできっこない」などと、冷たい反応をされることも少なくなかったといいます。
そんななか、この新しい技術を使ったリサイクル事業について熱っぽく語る岩元会長に、大きな関心を寄せた人物がいました。無印良品を運営する良品計画の金井政明氏(当時は社長、現在は会長)です。2015年に出版された岩元会長の著書『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』(ダイヤモンド社)のなかで、金井氏が岩元会長に語ったというこんな言葉が紹介されています。 「小売店やメーカーがものを売るだけの時代は終わった。これからは、使い終えたものを集めるところまでやって初めてお客さんが来てくれる」 小売店が社会で果たす役割について、まさに先を見据えた金井氏の言葉に、岩元会長は衝撃を受けたといいます。そして、“応援団長”になってくれた金井氏のアドバイスも受けて、経済産業省が行う繊維製品のリサイクル調査事業に参加。ここで、小売店の店頭で衣料品を回収するという、現在までつながるモデルの原型が生まれました。