奥野瑛太、大学在学中に撮影した『SR サイタマノラッパー』が大ヒット。出演と思わず出向くと…メインの役に大抜擢「最初は違う役だった」
出演映画が映画祭でグランプリ受賞
奥野さんは、大学4年生のときに入江悠監督の映画『SR サイタマノラッパー』に出演。この映画は、レコード店もライブハウスもない田舎町を舞台に、ラッパーを目指す若者たちの奮闘を描いたもの。 第19回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門でグランプリを獲得したのをはじめ、国内外の映画祭で多くの賞を受賞して話題に。奥野さんは、ラップで名声を得ることを夢見るヒップホップグループ「SHO-GUNG」のメンバー・MC MIGHTY(マイティ)役を演じた。 「大学在学中の4年生のときに入江監督が自主制作で『SR サイタマノラッパー』を撮ったんですけど、そのあと1年間ぐらい音沙汰がなくて。それで僕も卒業時期だったので就職もせず、バイトしながら小劇場で活動していて。 そうこうしているうちに『アフレコを1年越しにやるよ』みたいな話になって。それからゆうばりに出すという流れになっていったので、もうちょっと小劇場で芝居をやりながら自主制作の映画とかに関われたらいいなみたいな感じでした」 ――『SR サイタマノラッパー』が初めての映画ですか? 「大学在学中にも自主制作の映画とかには出ていたんですけど、ほぼほぼお蔵入りになって公開されることがなく終わることが多かったので、初めて劇場で流れたのが『SR サイタマノラッパー』でした」 ――メインキャラクターのひとりで印象的な役でした。撮っているときには公開されることは決まっていたのですか。 「全然。劇団員の駒木根(隆介)が主役で、入江さんと映画を撮るってなったときに、暇そうなやつがいないかということで集まったメンバーだったんですよ、僕。 それで、最初は違う役だったんですけど、それこそ録音部もいなかったので、ロケ地でディズニーランド帰りのミッキーマウスの耳をつけたギャルを捕まえて、その人にミキサーをやってもらったりとか、行き当たりばったりでボランティアのスタッフに関わってもらって作っていたんですよね。 だから僕もちょっとだけ出演して、あとはスタッフとして諸々の雑用をする気でいたら、『この役いないからちょっとやってくれない?』という流れで出ることになって」 ――ラップは前からやっていたのですか。 「そういうわけではないですけど、僕たちの世代はあまり日本語ラップに対しての抵抗がなく、普段から聴いていたりするのでわりとすんなり入っていけました」 ――ゆうばりでグランプリを受賞したと聞いたときは? 「『グランプリ獲った、やったね』みたいな感じですかね(笑)。それでどうのこうのとかいうよりも、お祭りみたいに楽しんでいました。上映したあとも、お祭りみたいにみんなで宣伝して…というのが楽しくてやっていた感じです」 ――ご自分たちでかなり宣伝活動をされたそうですね。 「みんなで即興のラップを叫びながら街頭を練り歩いてチラシ配ったりとか、知り合いの乗用車やレンタルした軽トラにガムテープでチラシを貼り巡らして街宣車にしたりとか…いろいろやっていました。楽しかったですね」 2010年、続編となる映画『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』が製作され、2012年、奥野さんが主演を務めるシリーズ第3弾『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』が公開。 1作目でMC IKKU(駒木根隆介)、MC TOM(水澤紳吾)と別れ、東京に出て行ったMC MIGHTYのその後を描いたもの。ラップを諦めず、チャンスを狙っていたマイティだが、ある事件をきっかけに窮地に追い込まれていく…という展開。 「ゆうばりの助成金で2を撮ったんです。2が女子ラッパーの話になったので、入江さんが3作目はシリーズの最後ということで、マイティの逃亡劇にしたいという話を伺ったんです。 2007年に1本目の撮影があってから2012年までの5年間の僕を入江さんなりに見てくれていたと思うんですけど、そういうことも反映させながらおもしろく自主制作の最後の花火を打ち上げたいみたいな雰囲気があって。規模も大きくなっていたし、なによりも感慨深いものがありました。 ボランティアのスタッフさんもたくさん関わってくれて。映像に映るものはほぼほぼボランティアスタッフの皆さんの手垢がこびりついていて、建設会社から足場材を持ち込んでフェス会場を作ったり、広大な敷地の草刈りをしたり、みんな手弁当でアイディアも物資も持ち寄って試行錯誤しながらやっていたので、映画作りの醍醐味を感じられる大きなひとつの流れに入れてもらったなという感じでした」 ――いろいろ出演作品も続いていますが、ご自身のなかで迷いなどは? 「毎回迷いまくっていますよ。現場はそれぞれまったく違う生き物のようなもので、ひとつ現場が違えば同じものはない気がしています。続いていくというような観点で続けてないというか、この作品をやったから次に続くでしょうみたいなことを思ったことないですね。 それどころかずっと迷路から抜け出せてない(笑)。現場で色々と頭を抱えていることのほうが多いですし、強いて言えば『続けられるかな?』みたいななかでずっとやっていますけど、何だかんだ言っても楽しいはずと思って続けているという感じです」 奥野さんは、圧倒的な存在感で注目を集め、映画『世界から猫が消えたなら』(永井聡監督)、映画『友罪』、映画『プリテンダーズ』(熊坂出監督)、映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(大友啓史監督)、『最愛』など多くの映画、ドラマに出演。 次回は、連続テレビ小説『エール』(NHK)の撮影エピソードなども紹介。(津島令子) ヘアメイク:光野ひとみ スタイリスト:清水奈緒美