ロシアが「地球温暖化」を喜ぶ知られざる理由 環境問題だけじゃない気候変動が与える影響
高校生の兄・大樹と中学生の妹・杏の兄妹と、年齢不詳の古物商「カイゾク」との会話で地政学について学べる『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海』。20万部を突破した本書から、今回は、気候変動と地政学の関係について、一部抜粋のうえ再編集してお届けする。 【写真】ストーリー仕立てでスラスラ読める!「カイゾク」との7日間の地政学講義 ■気候変動で変わる地図 世界では近年、猛暑や暖冬が続いており、氷が溶けそこに住むホッキョクグマが溺れて死んでしまうなどといった被害もでています。研究者によっては、毎年、日本の面積の5分の1程度の広さの氷がなくなっていると言う人もいます。
気候変動はこうした環境や動物の問題以外の国際関係にも大きな影響を及ぼします。 歴史上、人々は住みやすい気候の土地に高い価値を見いだしてきました。そうした地域が気候変動でどんどん北上することになれば、これまで住みづらかった北方の土地の価値が高まることになります。 北極圏も以前よりも暖かくなるにつれ、それまで氷にはばまれていた石油や天然資源を掘り出すことができるようになりました。ロシアの北極圏では資源開発も進んでいます。
氷が溶けたことによって、北極海を通る航路も頻繁に使われるようになりました。スエズ運河を経由する南回りの航路よりもずっと短いので、利用が増え続けています。 日本に近く、自然条件がきびしいロシアの極東地域にも南方からたくさんの人が移り住む可能性もあります。人口密度の高い中国側からすでに多くの人々が勝手に国境を越えて移ってきているという指摘もあります。 ■中国の思惑 2022年にロシアが始めたウクライナ戦争では、中国は天然ガスや石油など多量のエネルギー資源を買うことでロシアを支えました。そしてロシアは中国に頭が上がらない関係になりました。
気候変動で北のほうの土地が有望になるから、自分が思うように使えるように今のうちに準備しておこう。中国のリーダーたちは、そんなことを考えているのかもしれません。 世界史をみると、気候の変化で土地の価値が大きく変わることはたくさん起きてきました。最近では自国の農業のために人工的に雨を降らせるなど、各国で天気をコントロールする技術の研究も進んでいます。 ただ、雨など水資源を確保しようとすれば周りの国の水が不足し、争いになってしまうことも懸念されています。
田中 孝幸 :国際政治記者