「パプリカ」生産量10年で8割増 フルーツパプリカにも注目
規模問わず参入相次ぐ
パプリカの国内生産量が10年間で8割増加した。シェアは輸入品が大半を占めるが、国産も徐々に高まり現在2割になった。大規模法人の参入が相次ぎ、国産の周年供給が進んできた。彩りの良さや甘さが人気だ。環境制御型の大規模ハウスでの生産に加え、育苗ハウスを活用するなどした小規模生産も広がり、直売所の品ぞろえの充実にもつながっている。 【データで見る】国産パプリカの生産は拡大傾向 果肉が厚く甘味があるパプリカは、薄く切ってサラダに彩りを添える野菜として使われたり、煮込みや炒め料理などで使われたりする。JA全農が運営する通販サイトのJAタウンでは、国産パプリカ購入者から、「国産なので安心」「とても新鮮で、生のままおいしくて感動」など新鮮さや安心感への支持が高い。 農水省の調査によると2022年の作付面積は81ヘクタールで10年前から1割増、収穫量は7380トンと8割増えた。国内で生産が本格的に始まったのはこの20年ほどで比較的新しい。国内流通のシェアを見ると、約8割は韓国産などの輸入品。残り2割が国産となるが、10年前と比べると輸入減もあり倍増している。
売り場確保進む
国産に需要があるとみて、近年は異業種から参入し、環境制御型の大規模ハウスでの栽培事例も相次ぐ。最大産地の宮城県では大規模法人が、冬越しと夏越しの作型を組み合わせ周年で供給する。国産が安定して店頭に並べられるようになり「国産を扱うスーパーが増えてきた」(大手青果卸)。 為替の影響による韓国産との価格差縮小も国産販売拡大の追い風となる。東京都中央卸売市場の5月までの過去1年平均取引価格は、宮城県産は1キロ660円と韓国産(584円)の1割高で、同3割高だった昨年、一昨年より接近している。 既存施設を活用した生産も出てきた。三重県のJA鈴鹿の子会社・アグリサービス鈴鹿は、遊休育苗ハウス250平方メートルで、発泡スチロール箱を使った簡易な養液栽培システム「うぃずOne」を使い栽培する。大がかりな設置工事が不要で、かん水や施肥は自動。摘芯や摘果などの作業に注力できる。JAの直売所「果菜彩」の品ぞろえ充実へ19年にパプリカを導入した。直売所では8~12月に販売し、価格は100グラム当たり100円ほど。完売する人気で、「お客がついている」(栽培担当の林裕人さん)。 通常のパプリカより小さく甘いフルーツパプリカにも注目が集まる。種苗会社・大和農園(奈良県天理市)の「ぱぷ丸」は生食にも向き、種が少なく調理しやすい。栽培しやすい品種で、高温に強い改良品種も今年発売した。「直売所で差別化できるとして生産する農家が増えている」という。(玉井理美)
日本農業新聞