櫻坂46、新たな未来を感じさせる〈BACKS LIVE!!〉3days完遂 1期生・齋藤冬優花の卒業公演も
櫻坂46の10thシングル「I want tomorrow to come」の“BACKSメンバー”による単独ライヴ〈10th Single BACKS LIVE!!〉が、12月3日~5日に千葉・幕張イベントホールで開催されました。 櫻坂46が〈BACKS LIVE!!〉を実施するのは、今年8月に同会場で行った〈9th Single BACKS LIVE!!〉以来約3ヵ月ぶりのこと。「僕は僕を好きになれない」でセンターに立つ3期生・村井優を座長に、メンバー1人ひとりの個性が際立つ選曲・演出で会場のBuddies(櫻坂46ファン)を魅了するステージを展開しました。 また、事前に卒業が発表されていた1期生の上村莉菜、齋藤冬優花にとっては櫻坂46として最後のライヴとなりますが、公演直前に上村が怪我のため休演を発表。これにより、2日目となる12月4日公演に予定されていた2人の卒業セレモニーは「齋藤冬優花 卒業セレモニー」として行われることとなりました。 [ライヴ・レポート] この日は齋藤にとって、アイドルとして最後のステージ。この日は自身が「櫻坂46の楽曲で一番好き」と公言する三期生楽曲「何度 LOVE SONGの歌詞を読み返しただろう」でセンターに立ち、約9年にわたるアイドル人生の集大成のようなパフォーマンスで観客を圧倒させる。アンコールでは齋藤の卒業セレモニーも実施され、まずは選抜組を含む三期生とともに「BAN」をパフォーマンス。途中から一期生、二期生も加わり、齋藤との最後のステージを繰り広げた。その後、キャプテンの松田里奈が「今日を楽しみにしてくださっていた方の気持ちを考えると、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。今まで私のことをたくさん応援していただき、支えていただき、本当にありがとうございました。皆さんのおかげでここまで続けることができました」と上村から預かった手紙を代読。続けて、森田ひかるや小田倉麗奈、山﨑天、井上梨名、小池美波といったメンバーが思い出の写真とともに、齋藤との忘れられないエピソードを明かす。 そして、ネイビーのドレスを着た齋藤がステージにひとり登場すると、約9年間分の思いをしたためた手紙を読み上げる。「高校3年生の夏、進路に迷って塾を抜け出してオーディションを受けに行ってくれてありがとうと言いたいです」と過去の自分を振り返りつつ、「欅坂46と櫻坂46をほぼ同じぐらいの年月過ごしたのですが、欅坂46はグループと向き合う日々で櫻坂46は自分と向き合う期間。どちらも本当に大切な時間でした」と思いを告げた。また、三期生に対して「私が櫻坂46で夢の続きを見ることができたのは三期生が入ってきてくれたから」、二期生には「あのとき欅坂46を選んで入ってきてくれてありがとう。私が櫻坂46を大好きになれたのは二期生たちのおかげ」、一期生の上村や小池には「莉菜、ここまでいろいろな感情を共有してくれてありがとう。みいちゃん、(休業から)帰ってきてくれてありがとう。最後の一期生、頼みます」とメッセージを届け、ファンには「数え切れないくらいほどのアイドルがいる中で、齋藤冬優花という人間を見つけて、それぞれの愛や形で応援してくれてありがとうございました」と感謝を伝え、最後に「ここで見た景色や学んだことすべてをこれからの人生に活かして、新しい道へ歩もうと思います。私をアイドルでいさせてくれて本当にありがとうございました」と述べてスピーチを締め括った。松田から「9年間で一番思い出に残っていること」を尋ねられると、齋藤は「いろいろ迷うけど……今年の東京ドームの景色にすごい感動して。櫻坂46がここまで歩んできた結果が確実に見えた気がした」と回答。そして、欅坂46時代の「手を繋いで帰ろうか」がスタートすると、齋藤はトロッコに乗って会場を1周しながらBuddiesとの別れを惜しみつつ「この曲を櫻坂46で、笑顔でできたことに意味があった」という言葉を残す。最後は笑顔が入り混じる中、「櫻坂の詩」で卒業セレモニーを終えた。 千秋楽となるDAY3公演は、櫻坂46として新たな一歩を踏み出す重要な1日。「Overture」に続いてステージにメンバーが登場すると、村井を中心に据えた「19歳のガレット」からライブをスタートさせた。穏やかな中にもエモーショナルさを感じさせるこの曲で会場の空気を温めると、小島凪紗センターの「恋が絶滅する日」、井上センターの「それが愛なのね」と曲を重ねるたびに会場の熱気を高めていく。ステージ上の10人は随所で客席を煽りながら、豪快さとしなやかさを兼ね備えたダンスで観る者を魅力し続けた。 最初のMCでは、座長の村井が「初日と2日目もそのときにできる最大限を出したいなと思って臨んだんですけど、私たちならもっともっと上にいけるライブができるんじゃないかと昨日の夜考えて。なので、今日は皆さんの期待以上にライブにしたい」と宣言。続けて、遠藤理子は「『BACKS LIVE!!』ってメンバーによって空気や印象が変わる。今回は優のほんわかした空気が全員に伝染している気がして、優のMCとパフォーマンスのギャップだったり、可愛い楽曲やカッコいい楽曲、少しセクシーな楽曲を通してメンバーのいろんな魅力を見つけてもらえるんじゃないかなと思います」、小島が「昨日の卒業セレモニーのあと、冬優花さんから『明日の「『BACKS LIVE!!』、かましてきてね!』と伝言をいただきました。冬優花さーん、暴れるよー!」とそれぞれの視点で千秋楽への意気込みを口にした。 幸阪茉里乃センターの「無念」でライブが再開すると、井上センターの「確信的クロワッサン」ではアリーナ中央に伸びた花道を使ってパフォーマス。普段はクールな楽曲の印象が強い遠藤光莉が「君と僕と洗濯物」で可愛らしい側面を打ち出したかと思えば、「何度 LOVE SONGの歌詞を読み返しただろう」では前日までの齋藤に代わって幸阪が情熱的な歌とダンスで客席の熱気を高め続け、小池が中心に立つ「ソニア」でライブはこの日最初のクライマックスを迎えた。 和やかなトークを挟んでライブ中盤戦に入ると、ユニット曲を連発。まずは井上を石森璃花と小島が挟む編成で「真夏に何が起きるのかしら」で再度会場を温めると、「恋は向いてない」では増本綺良をセンターに村井や遠藤理子が大人びた表情でこの曲を表現してみせる。また、「心の影絵」では小池や遠藤光莉、大沼晶保がダイナミックなダンスで場内の空気を一変させたかと思えば、「イザベルについて」ではオリジナルメンバーの井上、大沼、増本に幸阪を加えた4人で力強いパフォーマンスとともに、その真っ直ぐな歌声を会場中に響かせた。 新たな衣装に着替えたメンバーが、1人ひとり巧みなダンス力を見せていくダンストラックからライブ後半戦に突入。激しいダンスサウンドに乗せて村井がステージ床から飛び上がって登場する演出などを交えて、そのまま「車間距離」に傾れ込むとセンターの大沼がパワフルなパフォーマンスで場の空気を掌握する。その一方で、「無言の宇宙」では遠藤理子をセンターに迎え、憂いに満ちた表情と繊細な動きでこの曲の世界を見事に表現。かと思えば、「もう一曲 欲しいのかい?」では「お前ら全員、態度で示せ!」など小島の絶叫まじりの煽りで会場の熱量を急上昇させ、前回の『BACKS LIVE!!』で座長を務めた石森が堂々とした佇まいの中にキュートさをにじませる「愛し合いなさい」、村井がオリジナルセンターの武元唯衣同様に椅子に座って床から迫り上がって登場し、クールさを強く打ち出したパフォーマンスを見せる「油を注せ!」でライブを最高潮に導いた。 本編最後の曲に入る前、村井は一礼してから「10枚目シングルで私は初めてBACKSメンバーに選んでいただきました。選抜発表後はなかなか前向きにはなれなくて、悔しさ悲しさなど後ろ向きな気持ちもあってたくさん悩みました。ですが、今の私は悲しいとか悔しいとかそういう気持ちじゃなくて、櫻坂46のためにどんなことができるか、どうやって貢献できるのかを考えているので、今ここに立っている私は前の私より確実に強くなっていると信じています」と自身の思いを吐露。続けて「この活動をしていて、これから先また挫折することもあると思います。でも、この経験があったから、これからの困難も乗り越えられると信じています。今の私を届けます」と宣言し、花道にひとり出ていき、彼女の魅力がたっぷり詰まったソロダンスを披露していく。そこから「僕は僕を好きになれない」に突入すると、センターの村井のみならず、ほかのメンバーも彼女の強い意志に感化されたかのように、一糸乱れぬ全身全霊のダンスと力強い歌声とともにこの3日間の集大成と呼べる圧巻のパフォーマンスを繰り広げ、大声援の中ライブ本編を終えた。 アンコールでステージに登場した村井は、「今はすごくスッキリした気がしていて。自分がこのライブに向けて思い描いていたものが本当にできた気がして、うれしい気持ちでいっぱいです」と晴れやかな表情を見せる。そして、最後に「I'm in」を会場のBuddiesとともに歌い、心をひとつに重ねて『10th Single BACKS LIVE!!』は大成功のうちに幕を下ろした。 ライブは本来ここで終了する予定だったが、鳴り止まない「櫻坂46コール」に応えるようにメンバーが再登場。喜びの表情を浮かべながら「19歳のガレット」をもう一度披露して、会場を多幸感で包み込んで3日間にわたるライブを完遂した。 2024年はこれまでの活動を通しても最多のライブ本数で、このグループにしか作り上げられないステージを提示し続けた櫻坂46。この1年に経験したことを糧に、彼女たちは2025年もさらに前進し続けていく。ここからどんな未来を見せてくれるのか、今後も櫻坂46の動向に注目していただきたい。 文: 西廣智一 写真: 上山陽介