メディカルクリエーションふくしま20周年/医療機器の最前線(5) 若者の発想に注目 学生コンテストを創設
福島県内で育まれた医療機器関連産業を未来につなげるため、郡山市のふくしま医療機器開発支援センターは高校生以上の学生を対象に「創生アイデアコンテスト」を催している。2020(令和2)年から4回開催し、県内外の若者から、秀逸なアイデアが寄せられた。 初回はコロナ禍の最中に開かれた。感染拡大防止につながる製品開発のアイデアを募った。最優秀賞に輝いたのは清陵情報高のチーム。主な感染経路が「空気感染」という事実に着目し、室内を定期的に換気するため、窓を自動で開閉する装置を開発した。生活に身近な点などが評価された。 2回目以降、対象を大学生に広げた。日大工学部のチームは視覚障害者が周辺にある物の位置や距離を把握できるスマートフォンのアプリを考案し、最優秀賞に輝いた。第3回の最優秀賞は笑いの健康効果に着目したユニークな発想が選ばれた。清陵情報高の生徒が腹の動きを察知し、笑った回数や程度を計測する機械と、情報を集約するアプリを開発した。第4回は眼鏡に体温計を組み合わせ、毎日の体温計測で免疫力を確認する名古屋市立大の学生のアイデアが最優秀賞となった。
コンテストは「メディカルクリエーションふくしま」と同時開催され、若者の柔軟な発想は関係者から高い注目を集めている。 コンテスト誕生の裏側には復興を願う高校教師の存在があった。清陵情報高教頭の深沢剛(56)は郡山北工高コンピュータ部の顧問だった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後、「人の役に立つものを作り、福島に明るいニュースを届けよう」と生徒に呼びかけた。 コンピュータ部は2014(平成26)年、機械の開発技術を競う世界大会で防災ロボットを発表し、京都大や大阪大のチームを抑えて世界一に輝いた。2016年には尿に含まれる糖分の検査機器や乳幼児のうつぶせ寝による窒息事故を防ぐ装置が高評価を得た。 医療機器分野の人材育成を模索していた支援センターの担当者が深沢の提案を受け、コンテストを創設した。 今回のコンテストのテーマは、災害時の医療福祉。どんな発想が示されるか、注目される。若者の柔軟なアイデアが社会課題を解決する可能性を秘めている。(文中敬称略)=おわり=
■第20回医療機器設計・製造展示会「メディカルクリエーションふくしま2024」 県やふくしま医療機器開発支援センター、福島民報社などでつくる実行委員会の主催。27、28の両日、郡山市のビッグパレットふくしまで開く。県内外から255の企業・団体が出展する国内最大級の展示会で、医療や介護に関する最先端の技術を紹介する。ものづくり企業や医療機器メーカー、医療関係の参加希望者は公式サイトで事前登録する。時間は午前10時から午後5時(最終日は午後4時)まで。