【デーブ大久保コラム】右腕を上からたたけるようになり山本由伸がメジャー初勝利となりました
【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】 オリックス時代にはなかなか見られない光景でした。初回から無死満塁というピンチを招いてしまいました。韓国シリーズでのパドレス戦の再来かと。昨年までの3年間は、日本では無双状態だったドジャースの山本由伸のことです。 【選手データ】山本由伸 プロフィール・通算成績・試合速報 韓国シリーズでは、私自身も見たこともない、1回5失点でマウンドを降りてしまうというまさかの展開。山本本人も絶対に考えてもいなかったはずです。そこからロサンゼルスに帰り、本拠地、ドジャー・スタジアムでの最初のマウンドで好投を見せました。このときは雨で試合途中に中断などもあり、勝ち星は付きませんでしたが、いい内容のピッチングを見せました。 聞いた話だと、韓国シリーズのときとグラブを置く位置を変えたとか。元の日本時代のスタイルに戻したのだ、と聞きました。それでしっかりと結果を出して、メジャー3試合目の登板となる現地時間4月6日のカブス戦をリグレー・フィールドで迎えました。 このときに思ったのは、やはりニュートラルな発想を持っている選手は強いんだな、ということです。選手たちは日々進化を目指しています。その中で、どんどん良くなっていく選手は、タイトルを獲得し続けるなど、結果が残せています。山本にしても昨年、投球フォームを変えましたよね。2年連続で沢村賞を獲得しながら、左足の上げ方を極端に変えるなど、進化を目指しました。結果は、16勝6敗で3年連続沢村賞を受賞です。本当にすごい! ということしか言えません。 その投手でさえもメジャーに行ったら、簡単に打たれてしまう。韓国シリーズのときには、うまく右腕を上からたたけていないのかなあ、と思っていました。それをドジャー・スタジアムでは修正し、そしてグラブのポジションを、オリックス時代のときと同じ位置に戻したというのです。 この勇気がすごいですし、結果を残し素晴らしい実績があるからこそ、その形に戻すことができたのだと。そこが本当に一流と言われるゆえんだと思いますね。 話をカブス戦の初回に戻しましょう。初回無死満塁。これは厳しい立ち上がりになるなと思っていました。しかし、ここから3者連続三振で無失点に。圧巻の投球内容でしたし、しっかり右腕を上からたたけていたからこそ、打者は打ちにくかったのだと思います。 そしてメジャーでは最近あまり見かけない、ドロップ系のカーブ。これが非常に有効です。97マイル(約156キロ)の真っすぐが浮き上がるようになってきただけに、一度浮き上がってからストーンと落ちていくドロップ系のカーブは分かっていても打てません。それを無死満塁でも駆使し、抑え込み、5回まで3安打7奪三振。見事な投球でメジャー初勝利。この先、腕が上からたたけている間は打たれないと思います。
週刊ベースボール