「パンデミック条約」反対集会に1万人超、拡散する陰謀論 強制接種、その情報はどこから?「光の戦士」発言も
外務省はホームページで、条約について「(交渉過程で)国家主権の制限や基本的人権の侵害について懸念を生じさせるような内容に関する議論は行われていない」と記し、SNSで拡散する情報を否定している。 NPO法人「アフリカ日本協議会」共同代表で、国際保健問題に詳しい稲場雅紀(いなば・まさき)さん(55)は「感染症の拡大や災害などに乗じて、政府が人権を侵害した歴史はあり、市民が監視をする必要はある」とした上で、WHOが主権を制限するといった主張は「陰謀論に基づく偽情報」と指摘する。 稲場さんは、こうした情報が「多国間協調を嫌うトランプ前米大統領の支持者の一部など、極右勢力の主張が基になっている」とみる。「条約制定交渉に市民として適切に関与していくためには、偽情報に惑わされないことが大切だ」と話している。 ▽護憲派の小林節氏の参加に衝撃 現在は「反省している」 集会で注目されたのは、改憲に反対の立場で知られる慶応大名誉教授の小林節氏(憲法学)が参加し、壇上であいさつに立ったことだった。小林氏は「陰謀論者と言われてもいい」と述べ、運動に加わる考えを示すと、会場からは大きな拍手が起きた。一方、こうした模様は交流サイト(SNS)で拡散され、インターネット上では「(小林氏が)陰謀論に落ちた」と、驚きを示す書き込みが目立った。
小林氏は集会に参加したことをどう考えているのだろうか。取材に対し、小林氏は「論争に参加するという考えで集会に参加し、治験がなされていないワクチンの危険性について啓蒙され、その点について賛同の発言をした」と説明した上で、「発言の一部が切り取られて拡散したが、多くの人から批判を受けて反省している」と話す。 パンデミック条約やWHOを批判する集会の主張については「前提知識に欠けていて、荒唐無稽な発想だ」として、相容れないとの考えを述べた。集会後、主催者らが小林氏の事務所を訪れ、長時間にわたって主張を説明したが「WHOが世界を支配しようとしているとか、人体実験をしているとか、被害妄想としか思えなかった」と言う。 小林氏は「批判の根拠がないと、周囲からは相手にされなくなり、被害妄想を強めて陰謀論に走っていく。それは新興宗教と同じものを感じた」と話している。 ◎陰謀論に詳しいライターの藤倉善郎氏の話